中年がアイドルオタクでなぜ悪い!〜現場伝導士〜

 
 
 ももいろクローバーZのドームツアー『DOME TREK2016』が2月20日にナゴヤドームで開幕した。
 メンバーからも『ネタバレ禁止令』がステージ上から出されているので、まだここであれやこれやと書くわけにはいかないが、ひとつだけ言えるのは「ライブ最高、現場最強!」ということだ。
 2月17日にリリースされたばかりの3rdアルバム『AMARANTHUS』と4thアルバム『白金の夜明け』の世界観を落としこんだステージで、2DAYSの初日は『AMARANTHUS』、2日目は『白金の夜明け』をフィーチャーしているので、その内容はまったく異なる。
 アルバムが発売されてから、わずか3日後にツアーがスタートしているから、ナゴヤドームの時点では、ほとんどの曲がお客さんにとって「おなじみではない」もの。初のドームツアーでこの試みは、あまりにも大胆すぎる。
 ただ、アルバムの完成度が異様に高いので、いいライブになる予感しかしなかった。
 レコーディングの最終日、僕はインタビュー取材のためにスタジオに入っていたのだが、最後の1曲を収録し終わったあとの百田夏菜子のひとことが忘れられない。
「いい作品ができた、という手応えはありますよ。これで私たちは100%の形でアルバムをみなさんにお届けすることができる。でも、これから、それを120%以上のものにしていかなくちゃいけないんですよ、ドームツアーで」
 頭の中にしっかりとしたアルバムや楽曲の世界観ができあがっているからこそ、レコーディングとドームツアーでのパフォーマンスを直結して考えることができる。あぁ、これはとんでもない光景がドームに広がるかもしれない……そんな期待と想像を夏菜子のひとことは抱かせてくれた。
 結果、素晴らしい公演になった。
 これが百田夏菜子のいう「120%」に達しているのかはわからないし、ツアーが進んでいくにつれ、確実にブラッシュアップされて、楽曲や公演全体が「育っていく」から、誰にも最終形態がどんなものになるかはわからない。
 でも、ナゴヤドームには初日特有の緊張感がステージにも客席にも漂っていたし、すべての人が「初見」となる分、一秒先になにが起こるかわからない新鮮さは、おそらく、他の公演の何十倍も大きい。
 逆にこれから開催される京セラドーム、ヤフオク!ドーム、西武プリンスドームではより完成度の高いものが見られるのだから、まさに「一期一会」の醍醐味が転がっている。
 それが味わえる現場は、やっぱり最強なのだ。
 ただ、すべての人が現場に足を運べるわけではない。仕事の都合で泣く泣く諦めた人もいるだろうし、地方に住んでいる方には遠征のハードルはやっぱり高い。
 そんな人のためにも、仕事で現場に足を運んでいる僕のような立場の人間は、その興奮や感動をつぶさにお伝えする義務があると思うし、これからも可能な限り、そうしていきたい。
 そうすることで、行きたくても行けなかった人たちに現場の空気感を御裾分けできればうれしいし、まったく行こうとも考えていなかった人が「うわぁ、行けばよかった」「次の機会には絶対に行こう」と思ってもらえたら、これに優る喜びはない。
 今回はネタバレ回避のため、これ以上、突っこんだことを書くことはできないが、もし、少しでもニーズがあるのなら、ドームツアーが終わり次第、この『HUSTLE PRESS』のサイト上で、詳細かつ長大なライブレポートを書き綴ってみたいと思っている。もう初日の段階で「伝えたい!」という感情を抑えつけられないのだから、西武プリンスドームでの千秋楽が終わるころには、どうなってしまっているのか、もう想像もつかない。
 
 

小島和宏(こじま・かずひろ)

生年月日:1968年10月4日
出身地:茨城県
血液型:B型
 
1981年、歌番組で観た伊藤つかさの「少女人形」がきっかけでアイドルにハマる。大学卒業後、週刊プロレスの記者を経て、フリーランスへ転向。2009年頃からアイドル関連の記事を執筆し、アイドル熱が再発。現在、ももいろクローバーZの公式ライターであり、AKB48・HKT48に関する著作や取材記事も多数。「BUBKA」にて、「Negicco〜Road to Budokan〜」を連載中。3月5日(土)27:00より「川上アキラのオールナイトニッポンR」にゲスト出演。アイドルオタクの恍惚と苦悩を綴った新刊「中年がアイドルオタクでなぜ悪い!」(ワニブックス)が発売中。3月5日(土)に出版記念イベントを渋谷HMVにて開催。
 
 

中年がアイドルオタクでなぜ悪い! 小島和宏