中年がアイドルオタクでなぜ悪い!〜特別な場所、自分だけの女神〜

 
 
 2月10日、AKB48・チームAの新公演『M.T.に捧ぐ』が開幕した。
 AKB48劇場では実に5年6カ月ぶりの新公演ということで、さっそく、初日を観覧してきたが、やっぱり劇場はいい。初日ならではの緊張感もまた、いい。
 なんだかんだで目立つのは宮脇咲良だ。彼女はHKT48に1期生として加入して、もう4年以上が経つが、いまだにHKT48 にはオリジナル公演がないため、兼任先のチームAではじめて新公演を経験し、さらにソロ曲までもらってしまう、という異例づくしのポジションに。これは博多にいるメンバーも羨ましいだろうなぁ、と。
 ちなみにHKT48劇場は3月いっぱいで閉鎖される予定。劇場が入っている商業施設がクローズしてしまうため、こればっかりは仕方がないのだが、全国の48グループの劇場の中でも随一の見やすさだったので、なんとも残念な限り。HKT48初のドキュメンタリー映画『尾崎支配人が泣いた夜』でも、なにかと劇場がクローズアップされていたが、監督を務めた指原莉乃が、もっとも劇場の重要性をわかっているんだな、と実感した。
 すべては劇場ではじまり、劇場で終わる。
 たとえドーム級の大会場で卒業コンサートを開催したメンバーでも、本当のラストステージは必ず劇場で迎える。
 そんな特別な場所に、ファンは自分だけの『シアターの女神』を探しに向かうのだ。
 
 今回、僕が『中年がアイドルオタクでなぜ悪い!』という本の執筆を依頼されて、真っ先に考えたのは、そのことだった。
 僕にとっての『シアターの女神』は、元チームBの平嶋夏海だった。
 きっと、劇場に足を運んでいなかったら、彼女の魅力に気がつかなかった。選抜メンバーではないのでテレビの歌番組にはほとんど登場しないし、アリーナやドームでのコンサートでは、意識して双眼鏡で追いかけないと見つからない。
 でも、劇場ではその輝きを最大限に発揮していた。
 完全に仕事抜きで追いかけていたのだが、ある日、突然、彼女は姿を消してしまった。
 それまで前人未到の大記録だった838回という最多劇場出演記録を誇っていた彼女は(のちに小林香菜に記録を塗り替えられ、現在、歴代2位)、その劇場で卒業公演を行なうことなくフェードアウトしていった。
 その喪失感や、そこから表舞台に復帰するまでの流れは『中年がアイドルオタクでなにが悪い!』の第4章でじっくりと書いた。
 個人的な感情も絡んでくるので、これは自著でなくては書けないことだし、5ページや10ページでは書き尽くせない。なによりも、ここまで気色悪いタイトルがつけられた本なのだから、それぐらいディープな内容というか、自分のオタっぷりを曝け出さなければ、タイトル負けしてしまうという思いもあった。
 そして、平嶋夏海はAKB48劇場へ帰ってきた。
 2015年12月8日、10周年記念公演の日、たしかに彼女は劇場にいた。
 公演が終わり、高橋みなみが呼びこむと、来場していたOGたちがズラリとステージの下に並び、ステージ上の現役メンバーと一緒に『桜の花びらたち』を大合唱。最高のエンディングだった。
 しかし、なぜかそこに平嶋夏海はいなかった。
 なぜなんだろうか、と考えると、もう胸のあたりがモヤモヤして仕方がない。
 ならば、もう、本人に会って聞いてみるしかない。
 というわけで『中年がアイドルオタクでなぜ悪い!』の巻末に、平嶋夏海との対談が掲載されることになった。
 もちろん、そのことだけを話したわけではないが(20ページを越えるボリュームになっているので、過去から未来まで話は及ぶ)、アイドル、そしてアイドルオタクに関するあらゆる要素が詰まった対談になっていると思うので、ご一読いただければ幸いだ。
 
 

 
 

小島和宏(こじま・かずひろ)

生年月日:1968年10月4日
出身地:茨城県
血液型:B型
 
1981年、歌番組で観た伊藤つかさの「少女人形」がきっかけでアイドルにハマる。大学卒業後、週刊プロレスの記者を経て、フリーランスへ転向。2009年頃からアイドル関連の記事を執筆し、アイドル熱が再発。現在、ももいろクローバーZの公式ライターであり、AKB48・HKT48に関する著作や取材記事も多数。「BUBKA」にて、「Negicco~Road to Budokan~」を連載中。2月22日(月)発売「BRODY」にて、天龍源一郎vs玉井詩織の対談を務める。2月28日(日)「女子プロレスリングBlossom—若き戦いのつぼみ咲く—」(フジテレビ 26時25分〜)に解説者として出演。アイドルオタクの恍惚と苦悩を綴った新刊「中年がアイドルオタクでなぜ悪い!」(ワニブックス)が2月29日(月)に発売。3月5日(土)に出版記念イベントを渋谷HMVにて開催。
 
 

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