1か月遅れのルネ2ndワンマン感想戦

 
 

「なんだこの光景は…。なんだこの感情は…。なんだかとても凄いものに触れているのではないか…?」

 
 去る2月28日(日)、恵比寿LIQUIDROOMにて、アイドルネッサンス2ndワンマンライブ「エビスですこぶるネッサンス!!」が行われた。2014年からAKIBAカルチャーズ劇場でレギュラー公演を重ねて歌とダンスの実力を磨き、2015年10月4日(日)についに1stワンマンライブ「エビスではじめるネッサンス!!」を開催、500枚のチケットが即日完売した。
 「名曲ルネッサンス」をコンセプトにあらゆる年代の楽曲をアイドルネッサンスなりに表現し、カバーしていくのが彼女たちのスタイル。男性曲や女性曲、バラードやアップテンポの曲など、ジャンルは問わずにあらゆる楽曲に果敢にチャレンジし、ファンに歌を届ける。
 1stワンマンライブ以降、1枚のシングルCD、2枚のミュージックカードの発売、及びリリースイベントを各地で行い、MUSIC JAPANにも出演を果たした。着実に人気と実力をつけ、階段を登り続ける彼女たちを見るべく恵比寿へ向かった。
 
 開場時間前、LIQUIDROOMのロビーに歓声が上がる。当日券完売の報。集まったファンの気持ちは既に高まっていたが、更に熱気は高まり、「すこぶる」楽しいライブになる予感でいっぱいだった。
 
 定刻の16時に幕は上がる。オープニングのSEが流れ、LIQUIDROOMに設置されているミラーボールが回り、最初の曲が始まる。「Music Lovers」だ。アイドルネッサンスの白い清純さを感じる衣装とは真逆な、妖艶な曲調にあわせた大人っぽいダンスにあわせて音楽やダンスへの愛を歌う。
 この曲の見せ場は、アイドルネッサンスの歌姫・石野理子のソロパートだ。PerfumeやBABYMETALの中元すず香を輩出したアクターズスクール広島出身の石野理子が感情たっぷりに歌いだし、そこに新井乃亜、南端まいなが丁寧な低音で歌声を重ねていく。昨年秋から年始まで何度となく各地のリリースイベントで歌われ、そして回数を重ねるごとにどんどん成長していったこのパートを本公演でも見事に歌い上げ、この後のライブパフォーマンスへの期待値が否応にも高まっていく。
 
 続いて披露したのは「BANZAI」。最近はライブで歌われる機会は少なくなっていたが、新井乃亜が「いっしょにー!!」と煽るまでなく、フロアでは皆手を挙げてフリコピをし、メンバーのパフォーマンスに応えていく。更にはライブの定番曲「PTA ~光のネットワーク~」をここで歌い、3曲目にして会場のボルテージは最高潮。
 
 自己紹介。ライブ直前の2月21日は南端まいなが、2月26日には比嘉奈菜子がそれぞれ16才の誕生日を迎え、本日が初ライブ。フロアからはたくさんのお祝いの声援が上がった。
 MCを挟み、「最初の3曲はちょっとかっこいい曲を聞いていただいたので、次はちょっと違ったアイドルネッサンスの一面を見てもらいたいと思います!」と宮本茉凜が高らかに宣言し、ライブ再開。
 
 次のブロックでは女性アーティストのカバー曲を続いて披露して行く。やや意外に感じるが、アイドルネッサンスは女性アーティストのカバー曲は少ない。
 
 電話が鳴るのを待ってる乙女心を歌った「テレフォンNo.1」。ついつい守ってあげたくなるような、そんな憂いを帯びた表情を見せながら可愛く「ピポパポ♪」と歌うメンバー、そしてそこから始まる重厚な指差しの振り付け。指差し直線上にいたファンからは悲鳴にも似た歓声がそこかしこから上がる。
 悲しい恋をしてそこから立ちあがろうともがくという、メンバーの年齢からはやや上の年齢の女性を描いた曲「女の子は泣かない」をしっとりと聴き入った後は、自信たっぷりな女性を描いた「う、ふ、ふ、ふ、」。宮本茉凜の茶目っ気たっぷりな「悪魔したくなる」に会場からはため息が漏れる。「Good day Sunshine」では満員の会場が一体となったクラップでメンバーを盛りたてて、ガーリーな曲を立て続けに4曲歌いきる。
 
 普段は「かわいい」という言葉をかけられると照れて全力で否定し、嫌がる素振りすら見せる石野理子も「アイドルネッサンスの中でもかわいい4曲を続けて聞いていただきました!」「みなさん!アイドルネッサンス、かわいかったですよね!?」と笑顔で客席を煽る。「かわいいー!!」と全力でレスポンスを返すファンの表情も満面の笑みであった事は間違いあるまい。
 
 2ndワンマンライブが近づくにつれて、メンバーからは「新たな事へのチャレンジがある」という事が事前に予告はされていた。その内容が、石野理子の口から明らかにされる。
 

「アコースティック演奏によるライブ」

 
 この発表には心底驚いた。と同時に納得もした。持ち前の明るさやダンスパフォーマンスを活かすプロモーションに注力をするアイドルグループが少なくない中で、アイドルネッサンスは歌を届けることも重視しており、その歌唱力は日を追ってレベルアップしているからだ。素晴らしい曲を奏でてくれるであろう。そしてその予感は確証に変わる。
 
 大江千里のカバー曲「YOU」。スピッツのカバー曲「スパイダー」。メンバー同士がお互いに目配せをしながら、曲を紡いでいく。そこには先ほどまで全力で身体を揺らし、コールを送っていたファンもその歌声に完全に魅了されていた。かくいう私も、彼女たちが作り出す世界観に完全に浸っており、曲が終わった事にふと気付き、慌てて拍手をしていた。比嘉奈菜子が「全曲アコースティックライブがやりたくなってきちゃった!!」という発言にみんな飛び跳ねて同意する。いつかそんな世界も覗いてみたい。
 
 「初恋」と「二人のアカボシ」を続けて披露した後は暗転し、スクリーンに2ndワンマンに向けたメンバーの映像が流される。個々の悩みを抱えながら、6人が団結し、ライブに向かう決意を宣言する。「今日ここに来て良かったなと思えるようなライブに、絶対します」
 
 映像が終わると新衣装に着替えたメンバーがステージに現れる。石野理子が「今日は新曲を持ってきました」と宣言し「ベステンダンク」を初披露した。
 ドイツ語で「ありがとう」という感謝の意味である曲名。3月22日に発売される1stアルバム「アワー・ソングス」のリード曲になる。
 
 続いて百岡古宵の煽りで「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」が始まる。繰り返される『青春って1,2,3,ジャンプ!』のコールアンドレスポンスにより会場の熱気は高まっていき、メンバーは次の曲の立ち位置へ。そのフォーメーションと、会場に鳴り響く目覚まし時計の音は…。「金曜日のおはよう」。気付いたファンから熱い歓声が曲前から上がり始める。
 
 「金曜日のおはよう」はアイドルネッサンス屈指のかわいらしい曲で、歌詞や振り付けがストーリー仕立てになっているのが特徴だ。比嘉奈菜子の歌う『隣の人眠そうですね そんな日常』のシーン。電車の中で本を読みながらうとうとと眠りそうになってしまうところや、眠そうにあくびをしている、そんな石野理子の演技がとてもかわいいので注目!原曲のファンだったという南端まいながステージで披露するたび毎回楽しそうに歌っている姿も魅力的。
 
 『きゅるり』の4文字で恋が始まる感情を歌う「恋する感覚」、アイドルネッサンスの代表曲の1つ「17才」とライブで人気の青春甘酸っぱい曲たちが続いていく。
 
 余談だが、「17才」におけるサビの振り付け。童顔で年齢以上に幼く見える南端まいなのキレのある腕の使い方と、ドヤ顔に近い自信たっぷりな表情が個人的注目ポイント。かっこかわいい。かわいかっこいい。
 
 後半ブロックも百岡古宵の煽りでスタート。畳み掛けるように続くロックナンバーで次々に会場をヒートアップさせていく。
 
 「夜明けのBEAT」で喉を枯らすほど叫んだ後は、「リベンジ」。本公演でまだ2回目の披露にも関わらず、以前から歌っていたのではないかと思うくらいの盛り上がり。ステージ・フロア共に一体となってヘドバンを繰り広げ、指差し、叫び、腕を振る。今後間違いなくライブの定番曲に成長していくに違いない。以前より「リベンジ」が好きで、歌う事が決まった際にはソファから転がり落ちて泣いて喜んだという比嘉奈菜子がこの曲の時にいつも以上に踊り歌い狂っている姿が見ていて微笑ましい。
 「リベンジ」が終わった瞬間に鳴り響く音。キレのあるカッコいいダンス。強い逆光を受けて表情は見えない。その姿はまるで…、シルエット。大歓声とともに「シルエット」が始まる。お互いが知らないファン同士で肩を組み、拳を突き上げ、みんなで合唱する。この日の百岡古宵の「奪って奪って奪ってく」はいつも以上に声と眼に力が乗っており、魂が奪われかけた、そんな印象を受けるほど。
 
 その後、メンバーから今回のライブへ足を運んでくれたファンへの挨拶が行われる。
南端まいなの「大きなステージに行っても、みなさんのこと、待ってるにゃ☆」を受けての、百岡古宵のアゴ外れ芸が安定の素晴らしさ。新井乃亜は涙を目に溜めながら、ライブに来てくれて時間を共有してくれている事への感謝を述べ、「楽しい以外は何も考えなくていいです」「私たちアイドルネッサンスはまだまだ走り続けます。皆さんが追いつけないくらい速く走って行きたいと思っています。」と力強く宣言。初披露からCD発売まで各地のイベントでファンと一緒にみんなで駆け抜けた、「Funny Bunny」を歌った。
 
 『君の夢が叶うのは誰かのおかげじゃないぜ』から歌い始める「Funny Bunny」。正に今、全力で走り続けている彼女たち自身の為の歌であり、集大成であった2ndワンマンライブ本編を締めくくるに相応しい曲。
  
 その後、不思議な感覚を味わった。
 
 曲が終わり、新井乃亜の「以上、アイドルネッサンスでした。ありがとうございました!」の号令と共にお辞儀をする。観客はそれにあわせて拍手をする。その拍手が、止まないのだ。
 
 そこで冒頭に戻る。
  
「なんだこの光景は…。なんだこの感情は…。なんだかとても凄いものに触れているのではないか…?」
 
 確かにライブはとても素晴らしかった。硬軟入り交じったセットリスト、アコースティックライブへの挑戦、新曲初披露。満足度は高かった。自分も本心から拍手をしていた。この同じ時間を共有していたファンたちの感情の高まりが増幅していき、拍手が鳴り止まないのだ。
 普段は500人規模の会場でレギュラー公演をしており、初の900人規模の会場での開催という事で、今回初めてアイドルネッサンスを見た観客は少なくないはず。そういう人も含めてアイドルネッサンスを虜にさせた、そんな最高の空間をアイドルネッサンスが作りあげたのだ。
 最初はとまどいがちだったメンバー。この光景を目に焼き付けようと瞬きもせず会場を見つめ続ける石野理子。新井乃亜の目にはどんどん涙がたまり、舞台袖に下がる合図を何度も出そうとするも、その場から下がるのを惜しむように何度も言葉を飲み込んで。
 1分程度の時間だったとは思うが、それは10分にも30分にも、永遠にも近い時間を感じた。とても、とても美しい時間。アイドルのイベントで感じたことのない、とても幸せな空気に包まれた最高の瞬間。
 
 アンコールを受けて登場すると、ファンにとっての応援歌「太陽と心臓」を歌った後、5月4日に結成2周年イベント「シブヤで2周年を感謝するネッサンス!!」をTSUTAYA O-EASTで開催する事が発表される。宮本茉凜が「2ndワンマンライブが終わって、2周年ワンマンライブがあって、そして、また、暑いアイドルネッサンスの夏がやってきます!」と高らかに宣言。次の夏に向けて「Dear, Summer Friend」を歌い、2時間半のライブを締めくくった。
 
 
 文章でまとめようとすると全てが蛇足になってしまうような多幸感溢れるライブだった。それは歌を愛し、歌詞を伝える事を追求しているアイドルネッサンスが、ファンの期待以上の場所へ進み続けていることを感じる事ができたからだろうか。そんな彼女たちの公演が「Music Lovers」で始まり、「Dear, Summer Friend」で終わった今回のセットリストは、歩みを止めないアイドルネッサンスの「今の瞬間」を切り抜いていたのかもしれない。
 
 新曲「ベステンダンク」では『この声は小さすぎて君の元までは届かない』と歌う。そして『例えそれを知っていても叫ばずにいられない besten dank』と続けて歌う。
 アイドルネッサンスが奏でる音楽は老若男女を問わずに、音を楽しませ続けてくれる。少しでも多くの人に彼女たちのパフォーマンスが届いて欲しいと思う。
 アイドル業界にひと味違った風が吹き始めている。
 
 
【セットリスト】
M1.Music Lovers (JELLY LEE PHANTOM)
M2.BANZAI (木村カエラ)
M3.PTA ~光のネットワーク~ (ユニコーン)
M4.テレフォン No.1 (ふくろうず)
M5.女の子は泣かない (片平里菜)
M6.う、ふ、ふ、ふ、 (EPO)
M7.Good day Sunshine (SAWA)
M8.YOU (大江千里)
M9.スパイダー (スピッツ)
M10.初恋 (村下孝蔵)
M11.二人のアカボシ (キンモクセイ)
M12.ベステンダンク (高野寛)
M13.あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう (岡村靖幸)
M14.金曜日のおはよう (HoneyWorks)
M15.恋する感覚 (Base Ball Bear feat. 花澤香菜)
M16.17才 (Base Ball Bear)
M17.夜明けのBEAT (フジファブリック)
M18.リベンジ (WANIMA)
M19.シルエット (KANA-BOON)
M20.Funny Bunny (the pillows)
EN1.太陽と心臓 (東京スカパラダイスオーケストラ)
EN2.Dear, Summer Friend (真心ブラザーズ)
 
 

高野雄幸