「DOME TREK 2016」外伝 第2回 高城れに編

 

「私を笑顔にしてくれるのはモノノフさん。だから『感謝』を伝えたい」

 
 まさかの『結婚観』を語った「ももっと、高城れに」は記事がアップされるやいなや、各方面で話題になった。
 そもそもアイドルはあまり結婚観なんて語らないし、特にももクロではそういう傾向が強い。こちらから聞きだしたわけでもなく、高城れにがみずから熱く語りだしたので、これは載せないわけにはいかないな、と。文面上はサラッとしゃべっているように見えるかもしれないけれど、本当は「熱弁」だったのだ。
 そこまであけっぴろげにする必要はないと思うのだが、高城は「頭の中で考えたことを黙っていられない」という。「いや、家族や友達には隠しておけるけど、モノノフさんには隠しておけないし、隠したくない」。これが高城れにの本心、である。
 彼女はあまり自分に自信を持っていないタイプだ。
 だから「モノノフさんに支えてもらっている」という思いが強い。
 ファンからすれば「れにちゃんの笑顔に救われている」となるのだろうが、それを高城れにに言わせると「私を笑顔にしてくれているのはモノノフさん。だから私のほうこそ感謝しなくちゃいけない」となる。
 口で「感謝」と言うのは簡単だ。
 でも、それを形にしようと思ったら、本当に難しい。「アイドル」と「ファン」という関係性の中では、いかにその気持ちをステージに落としこんでいけるか、ということに尽きるのだが、そんなに簡単な話ではないし、常に「どうすれば伝わるか?」を彼女は考えている。
 

ドームツアーの目玉演出から垣間見えた『感謝』の伝え方

 
 ドームツアーでそれを強く感じたことがあった。
 高城れには高所恐怖症である。
 だから、ドームツアーの目玉演出のひとつである「バルーンに乗って、スタンド席のお客さんのすぐ近くまで行く」というアクションは、彼女にとって、かなりハードルの高いものだった。
 実際、初日のリハーサルでは「高い! 怖い! ムリ!」を連呼していた。
 僕も極度の高所恐怖症なので、その気持ちはよくわかる。
 ドームの2階スタンドとなれば、相当の高さだ。高所恐怖症の人間ならば、2階スタンドから下を覗きこんだだけで、ちょっと足が震えてしまう。
 その高さまでバルーンは上昇する。
 ちゃんと地上ではプロの方がコントロールしてくれているので、安全面にはなんの問題もないのだが、高いところがダメな人にとって、そういう理屈は関係ない。
 しかも、ただバルーンに乗っているだけではなく、そこで歌わなくてはいけない。どんなに足がすくんでも、ちゃんと立っていなくてはいけない。
 これは相当、怖かったはずだが「客席のすぐ近くまで行って、お客さんの顔を見ていたら、怖さなんて忘れちゃった」と彼女は言う。
 ドームの後半戦では「もっと高く上げてほしい」と言うほどまでになっていたのは、少しでも多くのお客さんの顔を肉眼で見たい、という思いと、恐怖心を克服させてくれたモノノフに対する「感謝」の気持ちの表れである。
 

ソロコンサートでのハイタッチ会は、彼女が「やりたい!」と企画した

 
 高城れにはドームツアーの真っ只中でソロコンサートを敢行した。
 このソロコン自体が、まさに『DOME TREK 2016』外伝、である。
 かなりタイトなスケジュールの中で、ソロコンの演出を練っていた彼女は、やっぱりお客さんに「感謝」を伝えたくなった。
 でも、どんなにステージから感謝を伝えても、まだまだ伝えきれていない、という思いが彼女の中にはあった。
 その結果、コンサート終了後、すべてのお客さんをハイタッチでお見送りする、というサプライズが生まれた。
 最初は「握手会をしたい」と主張したが、さすがに時間がかかりすぎる。それでハイタッチ会になったのだが、誰かに言われたわけではなく、高城れに発信で決定した企画というところに意味がある。
 他のアイドルとは違い、ももクロでは、いわゆる「接触系」のイベントを基本的にやっていない。もう4、5年は行っていないから、モノノフにとって握手会などは最初から存在しないもの、という認識になっているし、そもそも存在しないものだから求めることもしない。
 だからハイタッチ会が行われるなんて、誰も想像していなかった(事前に告知はされていなかった)。コンサート終了後のアナウンスで、すべての観客がはじめて知らされ、誰もがみんな驚いた。そりゃ、そうだ。存在しないものが、いきなりプレゼントされたのだから。
 遠くからやってきたお客さんの中には、終電などの関係で泣く泣く参加を諦めた方もいたようだが、そういう人たちが先に外に出るための導線はハイタッチの列と並行して作られたので、みんな、帰る前に至近距離で高城れにの笑顔を目撃することはできた。
 観衆は約2000人。
 丁寧にお見送りをするので、結構、時間がかかる。
 さすがにスタッフが「ちょっと休憩を入れましょう」と、一度、列の流れを止めた。
 だが、高城れには水をひと口だけ飲むと、まだまだ長く続いている行列を見て「みんなをこれ以上、待たせたくない」と、わずか数秒で休憩を止めて、すぐにハイタッチ会を再開させた。
 がっつりとソロコンサートを完走した直後、である。
 しかも、過酷なドームツアーの真っ只中での開催。
 疲れていないわけがないし、本当だったら、楽屋でゴロンと寝ころんでしまいたいぐらいだったはずなのに、みずからの意志でハイタッチ会を開催した。
 1時間弱、ずっと立ちっぱなし。
 数秒間、休憩を挟んだだけで、あとはずっと最高の笑顔でお客さんを送り出した。
 これが彼女なりの「感謝」の伝え方なのだ。
 ももクロのやり方とはちょっと違うかもしれないけれど、ソロコンになると、こういうところに個性が出る。
 以前、僕は「高城れには“人間”として推せる」と自著で熱弁したことがあるが、この日の光景を見ていて「あぁ、この人は“推しがい”があるだろうな」と強く感じた。
 何度でも言う。高城れには、人間として推せる。
 

ライター・小島和宏

 
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小島和宏 こじま・かずひろ
 
1968年生まれ。89年、大学在学中に『週刊プロレス』の記者になる。92年、大学卒業後は発行元であるベースボール・マガジン社に就職。8年間の記者生活の後、スカイパーフェクTVにヘッドハンティングされる。その後から現在までフリーライター&エディター。近年はももいろクローバーZをはじめとしたアイドルに言及した取材・執筆も多く、週プロ流の活字アイドルレポート技法が多くのファン・関係者から支持されている。著書に『ぼくの週プロ青春記』『ももクロ活字録』『ももクロ画談録』(所十三との共著)『活字アイドル論』(以上、白夜書房)、『ももクロ見聞録』(SDP)、『中年がアイドルオタクでなぜ悪い!』(ワニブックス)、『3.11とアイドル』(コア新書)など。