「DOME TREK2016」外伝 第3回 玉井詩織編

(1) いまにはじまったことではないが、玉井詩織は本当に写真映えする

 本人は「いやいやいやいや……他のアイドルやモデルさんと同じ雑誌に載ったら、自分のダメなところがバレちゃいますから」と照れるばかりで、その事実を真正面から受け止めようとしない。
 先日、開催された『ももたまい婚』のパンフレット用に撮影をしたときも、彼女がウエディングドレスに着替えて控室から出てくると、現場がザワッとなった。
「あぁ、まるでゼクシィの表紙モデルみたいだ」と。
 裏を返せば、彼女のウエディングドレス姿にまったく現実味がなかった、ということになるのだが、モデルさんとして考えたら、まったく非の打ちどころがないパーフェクトな立ち姿だった。 
 今回の『ももっと、玉井詩織』の撮影も含めて、そういう現場を幾度となく目撃しているので「もったいないなぁ、もっとビジュアル的なソロ仕事をすればいいのに」と思ったりもするが、反面、あまり焦りは感じない。
 一般的なアイドルであれば、10代の輝いている瞬間をグラビアで切り取りたくなるが、玉井詩織は21歳。そして、昨年よりも今年のほうが間違いなく輝いている。
 一過性の美しさではなく、現在進行形。
 しかも、毎年、自己ベストを更新しているのだから、本人が「どうしても撮りたい!」と言い出さない限りは、焦らなくてもいいのだ、きっと。
 それでも、せめて年に1回はしっかりと写真におさめておいたほうがいい、と思っていたら、この1カ月間で何度も撮影する機会があった。きっと、そういう風は自然に吹いてくるのだろうし、彼女にとって大きなプラスになることを祈っている。

(2)ドームツアーと天龍源一郎

 さて、もう半年以上も前の話になってしまうが、ドームツアー開幕前に時計の針を戻したい。
 ナゴヤドームでの初日を前に、雑誌『BRODY vol.4』(白夜書房・刊)の企画で元・プロレスラーの天龍源一郎さんと玉井詩織の対談を敢行した。
 映画『幕が上がる』で父娘役を演じたことがある2人だが、そんなに共演シーンが長かったわけではないので、撮影現場で深い話をしたことはない、という。
 なぜ、ドームツアーの前に天龍源一郎なのか?
 天龍は現役時代、東京ドームで数々の名勝負を繰り広げてきた。
 当時、WWF(現・WWE)のスーパースターだったランディ・サベージとの一戦はいまでも語り草になっているし、アントニオ猪木からフォール勝ちしたシーンは、もう20年以上も前の試合なのに、今でも鮮明に覚えている。
 ドームで闘うとは、どういうことなのか?
 もちろん、ももクロはステージで闘うわけではないが、間違いなくドームに集まった観客との「闘い」はそこに存在する。
 だからこそ、天龍源一郎に「ドームでの闘い方」を伝授してもらいたかった。
 天龍は「彼女たちはドームより大きい会場でコンサートをやっているでしょ? いまさら、そんな話をしなくても大丈夫じゃないの」と言ったが、ももクロはちゃんとした屋根のあるドーム球場でのコンサート経験が極端に少ない。しかも、今回は新曲がメインになる。さまざまな「未体験」が幾重にも重なったツアーだった。
 その難しさは玉井詩織もわかっていた。
 だからこそ、なにかヒントを与えてもらえれば……プロレスラーとしてというよりも「ドームの達人」として、天龍源一郎へオファーを出した。
 この対談はひとりでも多くの人に読んでもらいたかった。読んでからドームツアーを見たら、彼女を見る視点が確実に変わるはずだし、どれだけの覚悟を背負ってステージに立っていたのかもわかるようになっているからだ(11月にドームツアーのDVD&Blu-rayがリリースされるので、そのタイミングに合わせて、改めて読めるようにしたいと考えています)。
 プロレスのたとえ話がどれだけ玉井詩織に伝わったのかはわからないが、後ろで聞いていた川上アキラが思わず落涙するほどの熱い対談。間違いなく、話の「芯」の部分は玉井詩織の心にも届いていたはずだ。

(3)万感の想いで迎えたドームツアー

 玉井詩織は『青春賦』と『MOON PRIDE』でピアノの演奏を披露する、というプレッシャーのかかりまくる大役を任されていた。
 ちょっとでも時間ができれば、ピアノの練習ができる部屋に飛びこみ、ひとりで籠ってしまう彼女の姿を、日本中のドームで目撃した。
 これまでは「なんでも器用にこなしてしまう」というイメージが強かっただけに、こんな姿を見ることはあまりなかった。いや、人に見られないように隠れて努力はしていたのだろうが、このツアーではそれを隠す余裕すらなかった。
 一度、京セラドームで大きな失敗をしてしまったことがあった。
 イントロの部分を何度も間違えてしまい、演奏がまったく進まなくなってしまったのだ。
 なんとか立て直して、無事に乗り越えてみせたが、これは精神的にかなりのダメージを負ってしまっただろうな、と思っていたのだが、意外にも本人は「大丈夫だよ」と笑ってみせた。
「間違えちゃったんなら、悔しかったと思う。でも、今日は頭の中からスポッと弾き方が飛んじゃったの。そりゃ、ステージの上では『どうしよう……』ってなったけど、みんなが思っているほど、落ちこんではいないのよ」
 そして、最終日の西武プリンスドーム。
 彼女はピアノの演奏中、ちょっとしたミスを犯した。
 正直に書けば、僕はどこをどう間違えたのかはわからないし、おそらく、ほとんどの観客が間違いに気が付いていない、と思う。
 それでも玉井詩織は、悔しくて、終演後に大号泣した。
 その悔し涙は、いまでも彼女の心の中にしっかりと刻まれている。
『ももっと、玉井詩織』のインタビューの中で、彼女は新曲『ザ・ゴールデン・ヒストリー』について「あえてこのタイミングで私たちが王道を突き進んだらどうなるのか?」と評した。
 このタイミング、というキーワードは、実をいうと西武ドームで流した悔し涙にもリンクしてくる。
 そのあたりの話は、現在発売中の『OVERTURE No.8』(徳間書店・刊)で改めて掘り下げてインタビューしているので、ぜひご一読いただければ、と思う。
 つまずいて、泣いて、また前を向く。
 そんな経験をドームツアーで味わってきたからこそ、玉井詩織はまたひとつ成長した。今回、撮り下ろした写真がハッとするほど綺麗なのは、きっと、そんな内面の変化も映し出されているからに違いない。
 
 

小島和宏