青春映画は嘘をつかない-四月は君の嘘-

青春映画は先の展開が分かりやすくハラハラやドキドキと言ったような高揚感が得られないのであまり好んで観たりはしない。もっぱら観る基準は主演キャストで決めることが多い。だけど、たまにふと青春映画が観たくなる気分のときがある。
先日、ふとそんな気分になり主演が若手女優筆頭の広瀬すずということもあったので『四月は君の嘘』を観てきた。
学生の頃ついた嘘と言えば、嫌いな授業があって風邪と仮病を使ってズル休みしたことや、身体測定で身長を背伸びして誤魔化したことくらいしか覚えてないが、そんな自分でもキュンキュン出来スッと映画の世界に入り込める作品だった。
本作は、ヒロインで自由奔放な個性派ヴァイオリニスト・宮園かをりを広瀬すず。そんな、かをりに惹かれていく元天才ピアニスト・有馬公生を山﨑賢人が演じ、そんなふたりが音楽によって導かれていく青春ラブストーリーになっている。
スクリーンに映る自由奔放な広瀬の無邪気さにときめいてしまったのは言うまでもないが、本作でも広瀬の静から動への変化の速さに驚かされた。静から動への変化と呼んでいるが、例をあげるならば、無の表情感情から目を見開き口を大きく開けて“あーっ!”と叫んで慌てふためきながら駆け寄ってくような動きの流れのことである。これが広瀬は本当に上手いのである。さらに、ドジッ子的な行動が広瀬の可愛さを引き立たさせる。
山﨑は役柄によってSとMが極端に分かれるという印象があるが、かをりを演じる広瀬に振り回される姿など見る限り、今回はどちらかと言うとMなのだろう。個人的にこっちの山﨑のほうが好きなのでよかった(笑)。極端に分かれるってことはふり幅が大きいとも言えるので、この若さで両極端を演じられるのは才能としか言えない。
この2人に負けず劣らず存在感を出していたのが、公生の幼馴染で密かに恋心を抱いている澤部椿役の石井杏奈と、公生と椿の幼い頃からの友人で、サッカー部のエースでとにかく女子にモテる渡亮太役の中川大志である。
「いやいやいやいや、幼馴染に自分に恋心を抱く女子とサッカー部のエースがいるなんてそんなわけ(笑)。おれなんて学生時代、周りにいたのアイドルオタクばっかだったぞ。」とも思うが、それが青春映画なのである。非現実な空間に自分を投影して楽しむのも青春映画の楽しみだと思う。
石井は徐々に自分の気持ちに気づきはじめる演技が俊逸だった。まだ女優としても初々しさが残る石井がこの役をさらに引き立たせていた。広瀬と山﨑が一緒にいるところを眺めるシーンで怖い目つきをするのだが、映画『ソロモンの偽証』での石井がフラッシュバックしてきて怖さが倍増した(これは自分だけだと思う)。
そして中川はずるい。イケメン、高身長、優しいと非の打ちどころがない役でずるい。ブレザーの中にパーカーを着るチャラさを出しつつ友達思いなところを出してギャップ萌えを狙ってくるあたりもずるい。すべてが羨ましいからずるいしか言えない。だが、中川の笑顔はすべてを許してしまう。本作でも中川スマイルがはじけていた。
広瀬と山﨑だけでなく、この2人も絡みつつ進展していく恋模様は必見である。
青春映画としてはベタなのかもしれないが、嘘をつかない展開に身をゆだねて本作の世界に入り込んでほしい。
 
 

ライター・YKDM