PICK UP ACTRESS 上白石萌歌

PICK UP ACTRESS 上白石萌歌

PHOTO=河野英喜 INTERVIEW=斉藤貴志

 
 

「羊と鋼の森」で高校生ピアニスト役
初めての本格的な姉妹共演も実現

 
 

――ピアノ調律師の世界を描いた映画「羊と鋼の森」で、高校生ピアニスト姉妹の妹・佐倉由仁を演じました。萌歌さんはお母さんがピアノの先生だそうですね。

「そうなんです。ただ、姉(上白石萌音)は少しだけ母に習っていたんですけど、私は習ったことはないです」。

――ピアノの音色は小さい頃から、耳に馴染んでいた感じですか?

「そうですね。ピアノの音や音楽がいつも周りにある環境にいたので」。

――今回の映画出演にあたり、ピアノを5カ月、練習したとか。

「本当に大変でした。由仁は小さい頃からずっとピアノを続けている役だったので、短期間で基礎の基礎から、そのレベルまで追いつくのはすごく難しかったです」。

――どんなことが特に大変でした?

「由仁が弾くのは速くて跳ねるような曲が多かったので、1小節の中に音符の数が多すぎて『渋滞してる』と思いました(笑)。その速さに置いてかれないように、弾くときにパワーが必要でした」。


――過程ではめげそうになったことも?

「本当に難しくて、何回もめげそうになりました。でも、この作品は関わる皆さんの愛が本当に強くて、絶対に良いものになるとわかっていたので、どうにか自分もそこにハマれるように練習していました」。

――寝ずにピアノを弾いていたりも?

「夜に弾き始めて、気づけば午前2時とか3時になっているくらい、時間を忘れていたことはありました」。

――撮影で弾く頃には、演奏を楽しめるくらいになりました?

「そうですね。自分で弾いていて、ピアノの音色に癒されました。由仁たち姉妹や他の登場人物たちがピアノに惹かれる理由も、すごくわかりました」。

――由仁の姉の和音を演じたのが萌音さん。劇中の姉妹の関係性が、実際のお2人と重なる部分はありました?

「映画の中でピアノは家に1台しかなくて、どっちが練習するか、微妙な間があるシーンがあるんです。そこにすごく姉妹の関係が現れていて、私たちにもあるなと思いました。お互いにそれとなく譲り合ったり、口にはしなくてもお互いの気持ちがわかっていたり……」。

――由仁が「宿題しなきゃ」とさり気なく譲りながら、2階へ階段を上る途中で、和音が弾き出したのをチラッと振り返ったりしていました。

「あのシーンはすごくわかります。本当は自分も練習したい。でも姉のことを思って、『今は姉が練習しなきゃいけない』という気持ちが出ていましたね。それを直接は言わないのも、姉妹らしいと思います」。


――和音の台詞で、由仁について「気持ちが大きくてコンクールも楽しめばいいと思っている。練習もしない日はしない」と話していました。「私がどんなに練習しても、本番でたくさん拍手をもらえるのは由仁」とも。そういうところはいわゆる妹っぽさかと思いますが、萌歌さんもそんなタイプですか?

「私もあまり緊張するほうではなくて、舞台とかでも本番直前までリラックスしています。程よい緊張感は持ってもアガらないところや、一発勝負が好きな感じは由仁と似ていると思いました。ただ、練習しない日があるというのはすごいですよね」。

――そこは萌歌さんとは違うところ?

「私は本番を迎えるまではわりと不安で、『あれをやらなきゃ。これもやらなきゃ』ってなるんですけど、由仁はデンと大きく構えている感じがしました。由仁の性格が自分の中にあったら、絶対いいだろうなと思います。私にとって由仁は理想でもあって、『こういうふうにできたら』と憧れも抱きながら演じていました」。

――それで奔放な感じに?

「弾く曲も和音と由仁で違っていますけど、他にも姉妹の違いをはっきり出したいと思っていました。和音に比べて、おしゃべりな感じを意識したり」。


――「ただいま」と帰ってくるときも、由仁らしさが出ていました。

「風のような感じで『ただいま』と。わんぱくな少女というイメージでした」。

 
 

辛さを見せない役でしたけど
描かれてない痛みも考えました

 
 

――今回の撮影中は、家に帰っても萌音さんとこの作品のことを話したりしました?

「毎日のようにしていました。現場から出ても『今日のあれはすごかったね』とか『あそこはどう思った?』とか話してましたね。すごく好きな現場だったので、外でもずっと現場の話をしていました」。

――それが演技に活かせたことも?

「アドバイスまではいかなくても、姉が客観的に見て今日のシーンはどうだったとか、次の撮影までに聞けるのは姉がいる特権だと思いました」。

――普段はお互いの仕事について話したりはするんですか?

「仕事のことも大学のこととかも何でも話します。私たちはあまりケンカもしないし、わりと友だちに近い感じで不思議な関係です」。

――以前は萌音さんに「ライバル意識もある」とのことでしたが……。

「自分が持ってない姉の才能や演じる役の色合いを、本当にいいなと思ったりはします。姉の歌やお芝居が好きで『どうしたら、こんなことができるのかな?』ってすごく思います」。


――「羊と鋼の森」ではピアノ演奏以外に、演技の部分で苦労したことはありました?

「ジストニアという病気になってしまって、『自分はどうしたらいいんだろう?』とか『その分、姉の和音がピアノを弾かなきゃいけない』とか、由仁と同じくらい悩みました。現場でテストに持っていくまでに、どうお芝居するか、ずっと考えてました」。

――劇中では吹っ切れた感じになってましたが、描かれなかったところで泣いていたかもしれない……とか?

「泣いたりもしたと思います。劇中にそういうシーンはなかったですし、役柄的にもそこを見せないのが彼女の強さですけど、明るさの中で根本では、やっぱりいろいろ考えているんでしょうね。私は歌うことが好きなので、『もし声が出なくなったら、どんな気持ちになるだろう?』と想像したり、身近なことで何かができなくなる痛みを感じようとして、由仁に近づこうとしました」。

――試写を観て、イメージ通りになってました?

「自分のお芝居に対して『ここはもうちょっとこうしておけば良かった』とか、いろいろ思うことはありました。でも、このお仕事をしている以上、反省は尽きないので。あれがそのときに出た最大限でした」。

――映画は全体的に静かなトーンの中で、ジワッと染みるものがありました。

「自分が出ている作品ということを忘れるくらい、観ていて没頭しました。すごく集中して、全身が研ぎ澄まされるような感覚がありました。私もこのお仕事に打ち込んでいる身として、調律師さんの姿に背中を押されて『頑張ろう』と思いました」。


――ところで、萌歌さんは3月で高校を卒業して大学生になって、生活とかだいぶ変わりました?

「大学でいろいろな人と出会えて、いろいろな話ができるのが、環境の変化として大きいです。世界が広がった感じがします」。

――高校とはだいぶ違いますか?

「違いますね。授業も自分の好きなものが取れるし、好きな友だちといられるし……。自分がどういうことに興味あるのか、周りの人によってわかってきました」。

――と言うと?

「自分を鏡で映したみたいに、好きなものとかがそっくりな友だちができたんです。生まれも育ちも違うのに、好きな本や音楽、考え方にすごく共感できて、その子と話していると『私はこれが好きなんだな』とわかるんです」。

――たとえばどんなものが好きだと、発見できたんですか?

「私は今まで近代小説が好きだったんですけど、その子から昔の名作のカミュやカフカを勧められました。自分では手を出そうと思っていなかったのに、今、移動中とかに読んでいるんです。やっぱりその子と同じ志向だから好みが合うのか、面白いですね」。

――萌歌さんがカミュを読んでるって、何かいいですね。最後に、“羊”か“鋼”か“森”に思い出があったりはしますか?

「まず“鋼”にはないですよね(笑)。“森”ということだと、私は鹿児島県出身で、家からちょっと車を走らせれば森や自然がある環境で育ったので、いまだに自然に帰りたくなることがあります。疲れたときに自然を求める傾向があって、森林浴とか最高だなと思います」。

――地元にいたときは、よく森に?

「ドライブに行って、ちょっと歩いたりしてました。ただ、鹿児島県出身なのに屋久島には行ったことがないんです。だから、行ってみたいです。屋久杉を見たりして、自然を感じたいです」。


 


 
 

上白石萌歌(かみしらいし・もか)

生年月日:2000年2月28日(18歳)
出身地:鹿児島県
血液型:A型

【CHECK IT】
2011年に第7回「東宝シンデレラ」オーディションでグランプリを受賞。2012年にドラマ「分身」(WOWOW)で女優デビュー。これまでの主な出演作は、映画「脳漿炸裂ガール」、「金メダル男」、「ハルチカ」、ドラマ「幽かな彼女」(関西テレビ・フジテレビ系)、「私の青おに」(NHK BSプレミアム)、ミュージカル「赤毛のアン」、「魔女の宅急便」、舞台「続・時をかける少女」ほか。「FACES 言葉みたいな顔がある」(TBS/水曜22:54~)で語りを担当。「TEIJIN」CMに出演中。映画「羊と鋼の森」は6月8日(金)より公開。声優として主演したアニメ映画「未来のミライ」が7月20日(金)、映画「3D彼女 リアルガール」が9月14日(金)に公開。10月11日(木)~11月7日(水)に新橋演舞場で、11月15日(木)~24日(土)に大阪松竹座で上演の舞台「浪漫活劇 るろうに剣心」に出演。
詳しい情報は公式HP
 

「羊と鋼の森」

詳しい情報は「羊と鋼の森」公式HP
 

 

 

 

 
 
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