SUPERB ACTRESS 深川麻衣

SUPERB ACTRESS 深川麻衣

PHOTO=河野英喜 HAIR&MAKE=山下景子
STYLING=原未来 TEXT=斉藤貴志

 
 

 
 

 
 

主演映画「おもいで写眞」が公開
葛藤を抱えながらお年寄りを撮る役

 
 
――主演映画「おもいで写眞」は、所属事務所・テンカラットの創立25周年企画と銘打たれています。深川さんが5年前に乃木坂46を卒業後、いろいろ選択肢はあったかと思いますが、テンカラットに入った決め手は何だったんですか?

「グループのときのスタッフの方に『お芝居のことを1から勉強できるところに所属できれば』と相談していたら、縁があってテンカラットと面接できることになったんです。自分が『こういうふうに仕事をしていきたい』と思っていたことと、事務所の考え方や方向性がピッタリで、数日後に『お願いします』となりました」。

――その方向性とは、先輩の田中麗奈さんや今回共演した高良健吾さんのように、演技力が高くて多彩な作品に出演し続ける役者を目指すといったことですか?

「所属している先輩方は本当に素敵な役者さんばかりで、目指すというのもおこがましいですが、自分は右も左もわからない状態の中で『地道にやっていこう』という気持ちで入りました」。

――今のところ、思い描いていた通りの女優人生になっていますか?

「お仕事を続けていられることは、すごくありがたいです。グループを卒業したばかりのときは、話題性からお話をいただく機会があったとしても、甘い世界ではないので。目新しさがなくなっても、ちゃんと仕事を続けていけるのか、すごく不安だったし怖くもありました。自分の中では3年が節目と考えていたら、もう5年目に入れました。先のことはわからない仕事ですけど、これからも続けていけたらと思います」。

――演技への考え方や取り組み方が変わってきた面もありますか?

「ちょっとずつ変わっています。やっぱり現場で得るものはすごく大きくて。ひとつひとつの作品に出演者の方やスタッフさんが集まって、見ていてもお話ししても刺激になることばかりです。現場ごとに尊敬する方ができて、いろいろな言葉をもらって、『自分にはこだわりが足りない』とも思いながら、価値観が変わったり目標ができていく感じですね」。

――今の自分の糧になったこともありますか?

「皆さん共通して素敵だと思うのは、同じ台詞を言っても、その人らしさが出たり、ご本人が透けて見える瞬間があって。仕事でも余裕を持って楽しんでいる方は素晴らしいし、私はいっぱいいっぱいになってしまうことが多いんですけど、そうなれたらいいなと思っています」。

――「おもいで写眞」で演じた音更結子は、メイクアップアーティストになる夢に破れて東京から故郷の富山に帰り、お年寄りの遺影用の写真を撮る仕事を頼まれた役。カメラにはもともと触れていたんですか?

「写真を撮るのはすごく好きでしたけど、スマホやフィルムカメラで撮っていました。プロのカメラマンさんが使うような本格的なデジタルのカメラは、ちゃんと触ったことはなかったです。だから、今回の撮影前に練習しました。フィルムカメラとかではオートで撮ることが多かったので、自分で露出とかISOとか調節するのは初めての経験でした」。

――劇中では、遺影写真と言うと「縁起でもない」と敬遠されていたのが、思い出の場所で写真を撮る企画にしたら、人気を呼びました。深川さん自身にも思い出の1枚的な写真はありますか?

「去年のお正月に帰省したとき、家族4人が揃った写真は意外とないなと思ったんです。古い写真ならあるかもしれませんけど、私たちが大きくなってからは撮ってなくて。それで家族写真を残したくなって、家の外に全員並んでもらって、脚立を使ってセルフタイマーで撮りました。それは大事な思い出の1枚ですね」。

――劇中のお年寄りが言っていたように、見ると元気が出たり?

「むしろ照れくさいです(笑)。家族もみんなシャイで、撮られ慣れてもいないので、笑顔というより恥ずかしそうにしていて。でも、そういう空気も含めて『いいな』と思って、現像してお気に入りになっています」。

――結子はほとんど笑顔を見せなかったりもしますが、演じやすいとか難しいとか、ありましたか?

「脚本を読んだときから、結子は何かに悩んで苦しんでいて、自分の中に葛藤があるのを感じました。特に前半は、笑顔が本当にないんですよね。人に対して怒りをストレートにぶつけるシーンが多かったので、その怒りがどれくらいの大きさなのかは、撮影しながら私と監督の考えのズレを埋めていた感じです。でも、結子は自分と似ているところも多くて。年齢もそうですし、やりたいことがあって田舎から東京に出た状況も近いところがありました」。

――深川さんは結子のように挫折して東京から戻ってはいないにせよ?

「ありがたいことに仕事を続けていますけど、壁にぶつかることは多いので、結子が仕事で抱えていた葛藤はすごく理解できました。私は本気で女優を辞めたいと思ったことはなくても、楽しいばかりではなくて、心の底から『向いてないんじゃないか?』と悩んだことは何回もあります」。
 
 

観終わったあとも「どこかで生きてる」と
思ってもらえるお芝居をするのが理想です

 
 
――結子は町役場で働く幼なじみの星野一郎(高良)から「昔から嘘が大嫌いで頑固で融通が利かない」と言われていました。そういう部分でも、深川さんと似ているところはありますか?

「頑固な部分は私にもすごくあると思います。ただ、結子のように嘘か本当か二つに一つで、白黒ハッキリさせたいのとは違うかもしれません。私はついていい嘘もあると思います。人それぞれ言えないこともあれば、あえて言わないやさしさもあって、グレーな部分は全然許せます。そこはあって当たり前だと思うんですよね」。

――深川さんの頑固さはどんなところで出ますか?

「人生の分岐点みたいな大事な分かれ道で、人に止められたり『こうしてみれば?』と言われても、自分の選択は『私はこれでいいんです。このタイミングだと思うんです』と変えません。直感を信じて決めてきたので、そういうところはすごく頑固だと思います」。

――日常で、たとえば「今日は焼肉を食べたいと思ったら何が何でも食べる」みたいな頑固さはないですか?

「そういうのは全然ないです。『これを食べないと気が済まない』みたいなことはありません(笑)」。

――結子を客観的に見ると、ああいう性格では生きにくいと思いますか?

「私は結子の不器用なところは、かわいらしいと思いました。観てくださる方にも、そこはちゃんと伝わって、ただの怒りっぽい嫌な子に見えなければいいんですけど」。

――そんなふうには映っていませんでした。おもいで写真を撮る仕事も、お年寄りたちに親身になりながら、一生懸命やっていましたし。

「自分を育ててくれたおばあちゃんの遺影がピンボケだった罪滅ぼしと恩返しをしたい気持ちで、必死になってやっていたら、自分の中でもだんだん楽しさを見出してきたんですよね」。

――一方、宴会の席では、一郎に「このお節介!」と足を踏んづけようとしていました。

「一郎に対しては叩いたりして当たりが強いですけど、あそこは結子の子どもっぽさや素が出る感じで、観ている方もひと息つけるシーンかなと思います」。

――その辺の一郎との掛け合いは、お芝居としては自然にできたんですか?

「高良さんがドーンと構えてくださったので、『先輩だから』とか『ここまでやっていいのかな』みたいな変な遠慮はなくて、私もドンと飛び込んでいけた感じです」。

――さっき出た「年齢も近い」との話の通り、「気づいたら29歳」という台詞もありました。深川さんも現在29歳ですが、もうすぐ30代になることは意識していますか?

「そうですね。10代から20代になったときも、すごく大人になる感覚でしたけど、20代から30代は特に女性には大きいんですかね? 仕事をする上でも、周りからの見られ方が変わる気がします。ある程度のことはできて当たり前。20代もそうですけど、30代はさらにハードルが高くなるので、そこに対する不安はあります」。

――同年代の女優さんで「改めて見た目に気をつかうようになった」という方もいました。

「体調管理はしっかりしていかなきゃと思います。運動する機会は前より劇的に減ってしまったので、自分でジムに通ったり、睡眠時間を意識的に確保したいです。体を壊したら仕事もストップしてしまうので、健康第一で頑張ります」。

――目指す女優像が変わってきたりもしていますか?

「そこはそんなに変わってないかもしれません。理想像は、現代劇でも時代劇でも未来の話でも、ちゃんとその時間に存在していて、観終わっても『この人は今もどこかで生きている気がする』と思ってもらえるようなお芝居をすることです」。

――自分で映画を観て刺激を受けることはありますか?

「あります。洋画も邦画も観ますけど、最近だと、『ミッドナイトスワン』は心にグサッときました。言葉にできない感情になって、観終わったあと、無駄に歩いて家まで帰りました」。

――女優以外では、30代に向けて取り組みたいことはありますか?

「趣味を増やしたいなと思っています。仕事だけではなく、遊びも広げていきたくて」。

――どんなことを趣味にしようと?

「昔から物を手作りするのが好きですけど、アウトドア系は何もやってこなかったので、いろいろ挑戦してみたいです。最近話題のキャンプとか」。

――ソロキャンプですか?

「1人はちょっと寂しいかな(笑)。何人かで行けたら。それと、釣りとかもやってみたいです」。

 
 

 
 

 
 

 
 


 
 

深川麻衣(ふかがわ・まい)

生年月日:1991年3月29日(29歳)
出身地:静岡県
血液型:O型
 
【CHECK IT】
2011年に乃木坂46のメンバーとして活動を始め、2016年に卒業後、本格的に女優活動をスタート。主な出演作は、映画「パンとバスと2度目のハツコイ」、「愛がなんだ」、「水曜日が消えた」、ドラマ「まんぷく」(NHK)、「日本ボロ宿紀行」(テレビ東京系)、「まだ結婚できない男」(カンテレ・フジテレビ系)など。映画「おもいで写眞」は1月29日(金)より全国ロードショー。
詳しい情報は公式HPへ
 
 

「おもいで写眞」

監督/熊澤尚人 配給/イオンエンターテイメント
詳しい情報は「おもいで写眞」公式サイトへ
 

 

 

(C)「おもいで写眞」製作委員会