PICK UP ACTRESS 福地桃子

PICK UP ACTRESS 福地桃子

PHOTO=河野英喜 HAIR&MAKE=midori
STYLING=武久真理江 INTERVIEW=斉藤貴志
衣装協力:PERMINUTE、FRAPBOIS、CHARLES & KEITH、Lana Swans

 
 

映画「あまのがわ」で初の主演
心を閉ざしてロボットと交流する役

 
 

――初主演映画「あまのがわ」で演じた琴浦史織は太鼓が大好きな女の子ですが、桃子さんは太鼓を叩いた経験はあったんですか?

「なかったです。出演が決まってから1カ月くらい練習しました。史織の成長過程で太鼓は大事なものなので、一生懸命やりたかったので。練習した分だけ上手くなれるのはスポーツみたいな感覚で、やればやるほど作品に近づける感覚もありました」。

――劇中での叩きっぷりを見ても、相当練習したんでしょうね。

「練習日を追加してもらったり、家で枕を太鼓代わりに叩いたりもしました。太鼓って手で叩きますけど、最初は脚のほうが筋肉痛になりました。意外と足腰がどっしりしてないと良い音が出ないのが発見でしたし、脚が痛くなると『ここを使っているんだ』と感じられました」。

――全身を使って叩く感じなんですね。

「手にはマメができて、最初はバチを握るだけで『痛い痛い!』と言ってましたけど、先生に見せたら『これはヘタな人にできるマメだよ』と言われました(笑)。親指と人差し指の間とかにできていたんです。それが練習していくうちに、小指とかの付け根にできました。握り方が合っていて上手になった証のマメで、自分の成長がわかるというか、達成感がありました」。


――撮影に入るときにはバッチリ叩けるように?

「どこが痛いとかはなくなりました。景色の良い海辺で太鼓を叩くシーンとか、一生できない経験じゃないですか。演技で笑うとかではなく、純粋に楽しんじゃってました」。

――史織役はオーディションで決まったんですか?

「はい。緊張感のあるオーディションだった印象があります。台本もありましたけど、今回のお話と関係ないテーマで即興のお芝居をしたりしました。私は『そこのイスを使ってお芝居をしてください』と言われたのかな? そんな内容で、ちょっと特殊でした」。

――それが史織とつながっていた感じはします?

「あまり関係なかったと思います。ただ、自分自身の素の人間性みたいなものを、監督たちにじっくり見られている感じがしました。こちら側は、20分で自分がどんな人間なのかを伝えないといけないオーディションだった気がします」。

――結果的に自分が選ばれたことが、納得できた部分はありますか?

「わからないです。何がどうだったのか……。ただビックリしました」。

――史織は太鼓をやるのを母親に反対されたことから心を閉ざしますが、それ以前は塾にも通っていて、言われた通りにしていたんですかね?

「言いたいことがあっても空気を読んで『言わないでおこう』というのが、ニュートラルな状態だったんだと思います。あることがきっかけでお母さんと確執が生まれて、友だちともうまく行かなくなって、おばあさんのいる屋久島に行きましたけど、確執がなければ史織はずっと何も言わず、新しい自分に出会えなかったように思いました」。


――桃子さんの家庭では「9時に寝る」「テレビゲーム禁止」といったルールがあったと、バラエティ番組で話してましたが、そこには反発しませんでした?

「私の場合、それが普通という感じでした。夜は早く寝ないといけないから、ドラマを観られなくて、録画して朝、早起きして観ていたんですよ(笑)。みんなが昨日の夜に観たものが私には最新の話題になって、学校に行ってました。そういうふうにルールの中で楽しんでいた感じですね。おかげで、今も早寝早起きです」。

――何時に起きて何時に寝るんですか?

「8時に朝ごはんを食べていたら、遅いですね。6時には食べ終わって、飼ってる犬のお散歩に出るのがルーティンになってます。夜も犬がいるから早く帰ってこないといけなくて、10時には寝ます。うちでは夜の8時で、もう真夜中の2時くらいのテンションなんですよ(笑)。8時に帰ってきたら、もう家族が寝ていたりするので、犬が吠えないようにそーっと入ったりします。そういうことに、もう慣れちゃいましたね」。

――史織みたいに「価値観を押し付けないで!」という気持ちはなかったと。

「そうですね。私は自分のやりたいことを抑えつけられていたわけではなかったので。でも、史織がそう言えた勇気はすごいと思います。前から変わりたい気持ちはあって、自分で気づいてなかったのが爆発して、そこをコントロールできないのは高校生らしいですね」。

――史織が心を無くした演技は難しい面もありました?

「ありました。私は普段よく笑ってしまうので(笑)。会話していて、胸の中で『ああ、楽しい』と感じるから笑うと思うんです。だから撮影期間中は、まず胸がワーッとならないようにしました。自分の今までの生き方とは全然違う体験だったので、難しいというより『笑わないと、こういう感覚なんだ』という感じで、とても新鮮でした」。


――演技で心掛けたことはありましたか?

「ひとつひとつの出来事を本当に自分が経験したように感じるために、1から10までテンションがあるとしたら、『ここで心が動いた瞬間は6だよね』とか、気持ちを数字にして整理していきました」。

――なるほど。たとえば3と4の違いも演じ分けていたんですね。

「はい。同じ場所が何度か出てきたりもするので。太鼓を子どもたちに教えに学校に行ったところも、1回目と2回目では立ち姿も視線も違いました。きっと史織は子どもが好きで、おばあちゃんに『教えてきてくれる?』と言われたときは役立ちたい気持ちもあったから、行ったと思うんです。でも、1回目のときは史織に人の言葉が届いてなくて、子どもたちが走っている姿も怖く感じたり、人というだけで一歩引いてしまって……。そうすると立ち姿も変わってくるのは、意識しました」。

――まず気持ちがあって、それが仕草などにも出ると。

「『こういう気持ちなのかな?』と考えて、演技をイメージしました。『本来の自分とそのときの自分が矛盾していることで戦っている……』とかも意識しました」。

 
 

目標は会った人を元気にできる
パワースポットのような存在です

 
 

――桃子さん自身は明るいタイプのようですが、心を閉ざすまでは行かなくても、何かで悩んで暗くなるようなときもありますか?

「ありますけど、やっぱり楽しい気持ちでいるほうが好きなので、自分自身が人から『楽しくなれた』とか『元気になれた』と思ってもらえることが憧れなんです。何かを引きずっていると、ありがたいことに、気づいて声を掛けてくれる人がいて、『もしかしたら今、顔に出ちゃっていたかな?』とハッとします。そういうときは気持ちを変えて、その場に立たなきゃいけないといつも思います」。

――人を元気にする存在になりたいというのは、素晴らしいことですね。

「今回の映画で屋久島に行って、自然の大きな力も再確認しました。そういうパワースポットみたいな人になりたいです」。

――そういえば、川で浮かんでいるシーンもありました。

「あれも屋久島です。撮影が11月で本当に寒いときでしたけど、夏のシーンだったので気持ち良さそうに入ってないといけなかったんです(笑)」。


――女優魂で頑張ったわけですか?

「水の中のほうが意外と冷たく感じなかったのて、撮影しているときは大丈夫でした。でも、上がったときに『こんなに寒かったのか!』と季節を感じました。あんなにきれいな川で浮いていると、プールとかとは全然違う感覚でしたね。耳も水の中に入っていて、普段はイヤホンをしていても聞こえる音さえしなくて、一気に水の音だけになる瞬間があって、史織が現実逃避したいことを描写しているんだとわかりました」。

――ちなみに、劇中では史織が見ただけで首を振っていたトビウオの唐揚げは、実際は食べたんですか?

「食べました。私は食べ物の見た目は大丈夫だし、お魚も大好きで自分で捌いたりもするので。でも、確かにあれを見たら、たいていの人はビックリしますよね(笑)。私もあの形は初めて見ましたけど、すごく立派だなって感動しました(笑)」。

――あと、史織はロボットのセイラに自分の胸の内を話すようになりました。ロボット相手のお芝居について、考えたことはありますか?

「私はぬいぐるみもあまり持ってなかったので、台本を読んでも、最初は史織とセイラの関係があまり理解できませんでした。しかも映像ではセイラを見てなかったので、イメージはしづらかったです。でも、一緒に撮影していく中で、最初はロボットと思ってぎこちないテンポで話し掛けていた史織が、だんだん普通に人と話すみたいになりました。息抜きできる相手になっていきましたね」。


――それによって史織が変わりました。

「セイラを人のように感じていきましたけど、当時の史織は本当に生身の人間だったら心を閉ざしていたと思うんです。ロボットだからこそ話せることがあったから、自分を開放しやすかった。それがわかったら、私のロボットへの向き合い方も変わりました」。

――桃子さんは趣味に映画鑑賞が挙がっていますが、自分が好きな作品というと?

「細田守監督のアニメ映画が好きで、特に『おおかみこどもの雨と雪』は私の中でずっと1位です。子どものときは絵本を読んだり、実際にはない世界を想像したじゃないですか。そういう『ここに行ってみたい』と思えるような世界観が、いつも細田監督のアニメにはあるので、毎回楽しみなんです」。

――実写映画を観ていて、「こういう女優さんみたいになりたい」と思うことはないですか?

「ありますけど、アニメで声でお芝居するのも表現のひとつだということも、細田監督の映画を観ていて感じました。普通にアニメを観ていたら、そこまで考えないじゃないですか。『子どもの無邪気な声だな』とか『大人の腹の座った声だな』とか思うだけですけど、声を使い分けるお芝居をするのは、すごく面白そう。声は生まれたときから何も考えず出しているので、身近だからこそ見えなかった、いろいろな使い方があると思います」。

――いつか細田監督のアニメに声優として出演できたらいいですね。差し当たって今、何か頑張っていることはありますか?

「大きい人になるのが目標なので、そのために何をしたらいいか考えてます。私の母が自分が第一ではなく、人のために何ができるかを考えて何10年も過ごしてきたんです。だから、私も人のために何かしたことで、自分が喜びを感じられるようになりたくて……。ただ人と会って終わりではなく、相手に『良い時間だった』と思ってもらいたいと心掛けています」。

――本当に若いのに立派な心掛けですね。

「いやいや、実行はできてませんけど、気持ちは持ち続けようと思います」。



 
 


 
 

福地桃子(ふくち・ももこ)

生年月日:1997年10月26日(21歳)
出身地:東京都
血液型:A型

 
【CHECK IT】
2016年にドラマ「潜入捜査アイドル・刑事ダンス」(テレビ東京系)で本格的に女優デビュー。ドラマ「あなたには帰る家がある」(TBS系)、「チア☆ダン」(TBS系)などに出演。初主演映画「あまのがわ」は2月9日(土)より全国順次公開。映画「あの日のオルガン」が2月22日(金)より全国ロードショー。4月1日(月)スタートの連続テレビ小説「なつぞら」に出演。
詳しい情報は公式HPへ
 
 

「あまのがわ」

 
詳しい情報は「あまのがわ」公式HPへ
 

 

 

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