PICK UP ACTRESS 福田麻由子

PICK UP ACTRESS 福田麻由子

PHOTO=小澤太一 INTERVIEW=斉藤貴志

 
 

映画「ラ」で異色のヒロイン
恋人に過剰な愛情を注ぐ

 
 

――子役の頃から天才と呼ばれてきた福田さんですが、自分の中ではやりやすい役とか難しい役とか、ありますか?

「どの役も難しいですけど、ハツラツとした明るい子みたいな部分は、私にはあまりないです(笑)。自分がすごく暗いわけではありません。ただ、印象や雰囲気があまりポップな感じにならないんです(笑)」。

――「ラ」で演じた、主人公の恋人のゆかり役はどうでした?

「雰囲気は私と合っていたかもしれません。とは言え、根本的な価値観や人間性みたいなものが真逆だったので、ゆかりを演じるのは大変でした」。

――バンドをやる夢を諦めきれない恋人の慎平にお金を渡しては、拇印を手製の「おたのしみスタンプラリー」に押させて、やがて笑顔で結婚を迫ると「お前、怖えよ」と言われてました。

「最初に台本を読んだときは、本当に『この子はヤバイな』と思いました(笑)。慎平くんへの愛……といえば聞こえはいいですけど、ある意味、依存じゃないですか。あそこまで慎平くんに依存して、狭い世界にいて他の人と交流のない中で、あの危うさはすごく怖かったです。でも、演じているうちにどんどん感情移入して、自分がゆかりになっていくと、もう怖いとは思わなくなりました。全部ゆかりにとっては普通のこととしてやっているので」。


――その辺は女優さんならではの感覚かもしれませんね。

「だけど、撮影が終わって1年くらい経って最初の試写を観たら、やっぱり怖かったです(笑)」。

――特に前半は随所でゆかりの怖さが出ていましたが、あの「おたのしみスタンプラリー」をノートに定規で線を引いて作るところはゾッとしました。

「あれは実際、私が手作りしました。台本を読んだときもすごいと思いましたけど、拇印がズラーッと押されているのを見たら、『うわーっ!』となる迫力がありましたね(笑)」。

――「リハーサルのときには、ゆかりのことが嫌いでした。でも、今ではゆかりのことを愛してます」というコメントがありました。

「私の最初のゆかりの印象は『弱い人』でした。『慎平くんの夢を応援している』と言っても、自分が何か夢を追い掛けているわけではなくて、慎平くんに託しているじゃないですか。そういうところが、すごく弱い印象だったんです。でも演じているうちに、逆にゆかりには彼女にしかない強さがあって、その強さは私が絶対持ってないと感じるようになりました。私と真逆でも、どっちが強いか弱いかではなく、彼女には彼女の生き方と考え方があって、たくましく生きていると思ったんです」。

――ゆかりの強さは、さっき出た“依存”と裏表のものでしょうか?

「依存ではあっても、あそこまで慎平くんを見捨てずに守り続けるのは、やっぱり強さだと思います。ちゃんと毎日働いて、彼との生活費を全部自分で捻出して、彼がどうなるかわからない将来のことまで、自分で全部守っていこうとしている。私は親に守られて生きてきたので、人生であんな覚悟をしたことはありません。だから、ゆかりが純粋にカッコイイと思えました」。


――慎平に「この部屋にいてくれるだけでいいの」と言った気持ちも理解できました?

「それも最初は正直、自分にはない感覚だと思ってました。でも、今はすごく理解できます。というか、ゆかりの気持ちを知る前の自分には戻れません。自分自身がゆかりを演じてから、変わったと思ってます」。

――役を離れたところでも、福田さん自身が影響を受けたということですか?

「はい。自分のどこかにゆかりが残っています。さっきの話と被りますけど、以前の私は他人に依存する人を弱いと思っていたので、あまり好きではなかったんです。それが、相手の人を守って生きていくと決めた強さを、カッコイイと受け入れられるようになりました。それと、あそこまで1人の人を好きになって人生を捧げられるのを、いいなと感じました。何か私、ゆかりを演じていて、結構しんどい役でしたけど、今まで感じたことのない幸福感みたいなものがすごくあったんです」。

――へーっ……。そこまで影響がありましたか。

「今までも恋愛したことはあるし、もちろん本気で好きでしたけど、私にはそれと別のところで、守りたいものがいろいろありました。ゆかりはそうではなくて、もう全身全霊で慎平くんのことが好き。そこまで人を好きになれる幸福感は、いろいろと追っていたら感じられないと思うんです。私はお仕事を頑張っていく以上、ゆかりのような気持ちで人を愛することはたぶんないから、逆に『いいな』と思う部分がありました」。


――ただ、ゆかりは慎平にうっとうしがられていました。それはゆかりもわかっていたんですよね?

「あれは切ないですよね。特に前半、慎平くんはゆかりのことを本当に邪険に扱っていて、金づるとしか思ってない。それをゆかりがわからないはずはないけど、心に何重にもフタをして見ない振りをしていました。でも、演じている福田麻由子としては、フタをした奥の心も見えるわけじゃないですか。だから、ゆかりは辛くないけど、私は辛い……みたいな感じです」。

――それも女優さんらしい感覚ですね。

「仕事柄ということもありますけど、私は自分の気持ちに敏感なんです。ゆかりみたいに自分の見たくないものにフタをしても、いつか気づいてしまうかもしれないところで生きていくのは、私にはすごい恐怖なんです。ゆかりはたぶん、ずっとそうやって生きてきたから、疑問を持たない。自分を守る術として心にフタをする。でも、私にそれはできません。だから怖かったし、本当に辛かったです」。

 
 

1人をとことん愛する素晴らしさと
他に愛を注げない孤独を見せたい

 
 

――ゆかりは亡くなった母親に大きな影響を受けたようでもありますね。仏壇に手を合わせて「幸せになるからね」と言っていました。

「そこは意識しました。ある意味、ずっとお母さんに依存していたので、『授かった子どもは絶対産まなきゃいけない』みたいなゆかりの価値観や考え方は、お母さんの影響を受けている……ということで役を作っていきました」。

――生前の母親との関係も想像しつつ?

「それは観ていただく方に委ねる部分ですけど、そこも監督と話し合いました。お母さんのことは大好きで、話に出てこないお父さんとの関係はあまり良くなくて、2人とももう亡くなっている……という裏設定みたいなものはあります」。

――母親のお墓の前で普通にお弁当を食べるシーンは、インパクトがありました。

「あのシーンは、私は監督にずっと『要ります?』と言ってたんです(笑)。でも監督的には重要なシーンで、『亡くなった方がいる場所で、ゆかりが生きるために食事をしている画を撮りたい』と言われたので納得しましたけど、シュールでしたよね(笑)」。


――特にゆかりの人間性が出たと思うシーンはどの辺ですか?

「ゆかりが勤めている市役所に慎平くんのお父さんが調べものに来て、ちょっと対面するシーンです。ゆかりのすごく冷たい顔、それこそ彼女の怖い部分が見えるので、あのシーンは好きです。1人の相手をすごく愛しているのは、そこだけを見たら素敵だけど、その愛が向いていない人に対する冷酷さが出ていたと思います。あそこに限らず、ゆかりはほとんど慎平くんと一緒にいる役だからこそ、他の人とちょっとずつ1対1で接する場面で人間性が見えるので、大事に演じるようにしました」。

――なるほど。確かにそうでしたね。

「私自身はゆかりの愛情を100%肯定はしません。あそこまで人を愛する素晴らしい一面と、たくさんの人と関われず他のことに愛を注げない孤独を、両方見せたいと思っていました。それが一番出たのが、お父さんとのシーンだと思います」。

――冷酷と言えば、ゆかりは慎平が実家で母親からもらってきたものを、捨てたりもしてました。

「そうそう。あれも本当に慎平くんのことを想っているとは言えないじゃないですか。ゆかりのちょっとしたエゴが見えて、それがある意味、人間らしくて、好きだったりもするんですよね」。


――後半は怒涛の展開があってラストシーンを迎えますが、慎平とゆかりはあの後、どうなったと思いますか?

「幸せになってほしいし、なったと思います。きっと慎平くんがゆかりを大事にしてくれるようになって、ゆかりは逆に慎平くんから一歩離れて1人の人間として踏み出す。そういうラストだったと、私は解釈しています」。

――福田さんは結婚に対する夢はありますか?

「もともと結婚願望が強いほうではないので、『将来絶対結婚する』とは思っていません。憧れはありますけど、素敵な結婚生活といっても、まだ全然想像できません」。

――どうなるにせよ、女優は続けていくんでしょうね。

「そうですね。結婚のために仕事を辞めるくらいなら、一生1人でいいです(笑)」。

――「俺と仕事とどっちを取るんだ?」とか言われたら……。

「『ごめん。芝居だわ』ってなりますね(笑)」。

――仕事の息抜きは読書が多いんですか?

「読書か、普通に友だちと食事に行くか、あとはゲームも好きです」。

――どんなゲームをやるんですか?

「RPGです。普通ですけど『ドラクエ』とか『ファイナルファンタジー』とかです。最近好きなのは『ドラッグオンドラグーン』。ファンタジーでストーリー性があるゲームが好きです」。

――今年は朝ドラ「スカーレット」の出演も決まって、忙しくなりそうですね。

「そうですね。とりあえず『スカーレット』に捧げる年かなと思っています。夏に25歳になりますけど、子どものときはがむしゃらに芝居をやってきて、10代後半から20代前半は芝居を一番に考える気持ちは変わらずありつつ、だからこそ『人として、このままでいいのか?』と思ってました。自分の人生を見つめ直したくて、バイトをいろいろやりました」。


――一般社会の仕事も経験しようと?

「そうです。もちろん、どの仕事も本気でやりましたけど。それで、ひとつの区切りの25歳から30歳までは、またがむしゃらに芝居をやろうと考えています。そのタイミングで朝ドラに出られることになったのはありがたくて、新たなスタートになればいいなと思っています」。

 


 
 

福田麻由子(ふくだ・まゆこ)

生年月日:1994年8月4日(24歳)
出身地:東京都
血液型:B型
 
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就学前の1998年にCMに出演して芸能界デビュー。小学生時代にドラマ「女王の教室」(日本テレビ系)、「白夜行」(TBS系)などで注目を集める。その他の主な出演作はドラマ「それでも、生きてゆく」(フジテレビ系)、「未来日記-ANOTHER:WORLD-」(フジテレビ系)、映画「L change the WorLd」、「ヘブンズ・ドア」、「FLARE フレア」、「疑惑とダンス」ほか。映画「ラ」は4月5日(金)より公開。9月30日(月)よりスタートの連続テレビ小説「スカーレット」(NHK)に出演。
詳しい情報は公式HP
 

「ラ」

詳しい情報は「ラ」公式HP
 

 

 

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