PICK UP ACTRESS 萩原みのり

PICK UP ACTRESS 萩原みのり

PHOTO=河野英喜 INTERVIEW=斉藤貴志

 
 

むき出しの言葉が刺さる若い女性のひと夏
当て書きされた映画「お嬢ちゃん」に主演

 
 

――今年の夏は何か夏らしいことはしましたか?

「初めて東京のお祭りに行きました。高円寺の阿波おどり。今まで知らなくて『やってるよ』と言われて行ったら、人が多かったですね」。

――若者が盛り上がってるようなところに行ったりは?

「日焼けしたくないので海は行かないし……。みんな、夏は何をしてるんですか?」。

――映えるナイトプールに行くとか?

「私が映えるナイトプールに絶対行かないと思って言ってますよね(笑)? 休みの日はだいたいサウナに行ってました。あと、母と鎌倉で『お嬢ちゃん』のロケ地巡りをしました」。

――「お嬢ちゃん」で演じた同名のみのりは、背中の病気、新体操……といった話をしていましたが、みのりさん自身がだいぶ投影されたんですか?

「当て書きというか、私の今までの人生のバックグラウンドみたいなものが脚本に織り交ざっています。今までのようにまったく別の1人の役を作るというより、自分が軸としてある中で演じる感じでした」。


――劇中のみのりは、許せないことをされたり言われると毅然と立ち向かってました。親友に嫌なことをした男に「クソ野郎」とか言って引かなかったり……。ああいう面も、みのりさんにあるんですか?

「寂しさや弱さを隠して尖っているのがみのりで、私は笑ってごまかすタイプ(笑)。ある意味逃げていて、表現の仕方はまったく別です。でも、根っこにある気持ちは同じだと思います」。

――みのりさんも心の中で怒ることはあると?

「それはあまりないです。私はこんな顔なので『怒ってそう』と言われますけど(笑)、この作品で監督に最初に相談したのが『怒りの沸点がわからない』ということでした。怒るのは体力を使うし、信じているから違うと怒ると思うんです。私は何に対しても、それはあまりないし、『そんなものかな』というくらいです」。

――「お嬢ちゃん」は二ノ宮隆太郎監督が「女優・萩原みのりの魅力を映画で表現したい」と作ったそうですが、みのりさんにはどういう形で話が来たんですか?

「二ノ宮さんが撮った『枝葉のこと』の試写会に呼ばれて、その場で『次、主演でやってほしい』と言われました。そのときは『何のことですか?』くらいで、脚本も何もなくて、本当に撮るとは思いませんでした(笑)」。


――脚本が出来上がって、みのりさん自身も自分の魅力を表現できると思いました?

「私に萩原みのりの魅力はわかりませんけど、会話がこんなに多い作品はなくて、むしろ『私にやれるだろうか?』とプレッシャーを一番感じました」。

――確かに劇中で事件が起きるのではなく、会話や言い合いの中で「そんなことがあったのか」とわかる映画でした。会話にしか出てこない、酒浸りだったらしい父親のこととかは、イメージを固めておいたんですか?

「監督と共通認識を持ったほうがいいことは詰めました。でも今回は、あえて余白を残すことを選びました」。

――みのりの親友の理恵子はモノをはっきり言わずにウジウジした感じで、みのりがむしろ嫌いそうにも見えましたが、「私のほうが依存してる」という台詞もありました。彼女との関係性はどう捉えましたか?

「私は逆に、みのりはあの理恵子だから一緒にいられるんだと思いました。みのりの顔色をうかがう人も多い中で、理恵子は話すペースとか合わせてこないんですよね。だからこそ、いつも一緒にいられる。ただ、普段の生活でも『なぜその子と親友なの?』と聞かれたら、言葉で説明できないじゃないですか。理恵子もそういう存在なんだと思います」。


 
 

悩んでいたことを一度全部振り切って
役者の仕事が生活の一部になりました

 
 

――みのりの、煙草を口の端に入れる吸い方にはこだわったんですか?

「あれは監督が決めました。最初、『枝葉のこと』の(自ら主演した)二ノ宮さんの吸い方をするように言われたんですけど、小指が変に立ったりして、何度やっても『女子っぽくなる』と指摘されて。そこからいろんな持ち方を試していた中から、『それで』となりました」。

――撮影は全体的にスムーズに行きました?

「なかなかOKが出ないことはありましたけど、基本的にはだいたい2~3テイクで終わりました」。

――演技に悩むこともなく?

「悩んだといえば一番悩んだ作品ですけど、二ノ宮さんを信じることが今回は大きかったです。『枝葉のこと』でも二ノ宮さんの映画は全部は理解できないんです。なのに『何かすごい』という説得力がある。だから、二ノ宮さんがいいと言ったらいいんだと信じました」。


――演技というより編集とかの話でしょうけど、歯磨きとかベッドにうつ伏せとか、台詞がない日常的な場面が長めに挿入された印象もありました。

「現場で、たとえば歩くシーンで、私がフレームから出てからもカメラはしばらく回ったまま、だいぶ経ってからカットがかかったりしました。それが二ノ宮さんの間なんだと思います」。

――最初に出ましたが、ケンカ腰での言い合いは、みのりさん自身はあまり経験ないですか?

「1回もないと思います。普段の私はあまり感情がワーッとなることがない分、そういったことができるから、たぶん私はこの仕事が好きなんです。普段も自分で気づいてないだけで、いろいろ思っているのかもしれませんけど、お芝居でそれを解放できるのが楽しいです」。

――みのりさんの「お嬢ちゃん」についてのコメントでは「役者で生きていく決意の作品」とありました。

「『役者を辞めようかな』とかいろいろ考えていたときに、この映画のみのり役と出会って、現場が楽しくて、悩みを一度全部振り切ることができました。切り替えて『ここからスイッチを入れていけたら』と思って、それからここ1年で、前より役者の仕事を好きになりました。やっと『私は役者をやっていきたい』と胸を張って言えるようになったんです。今では役者の仕事を生活の一部にできてきた気がしますけど、この作品はその一番大きなきっかけになりました」。

――でも、みのりさんにはもっと以前から、若手女優では屈指の役者らしさを傍からは感じました。役者を辞めることまで考えていたとはビックリです。

「役や現場やタイミングによって、感じることはいろいろ変わります。私はよく『芯がある』と言ってもらえるんですが、自分ではそんなつもりはなくて、本当にブレブレ。考えることもいつも違うし、人の言葉でウワーッとなるし、芯はまだ定まっていません。でも、『お嬢ちゃん』をきっかけに、少しだけ進みたい方向が見えてきた気はします」。


――「お嬢ちゃん」で演技観が変わった部分もあるんですか?

「全部をあんなに長回しで撮ることは他の現場ではなくて、今までと違う体験はできました。これほど自由に間を使って良かったのも独特だったのと、役者が監督と一緒に映画を作るということをちゃんとできた現場でした」。

――クライマックスの独白も長回しで、「本当にくだらない」と言いながら涙してました。あれは何の涙だったんでしょう? 何がくだらなかったのか……。

「そこはあまり明言しないでおきたいです。やっぱり余白を残しておきたい。特にあそこのシーンは、そのために映画の全部があったと言っても過言ではないので」。

――他にも公開予定の作品が控えていますが、改めて役者スイッチが入ったところで、今後挑戦したいことはありますか?

「私に強いイメージを持っている方が多くて、うれしいことですけど、そうでない役もやっていきたいなと思っています」。


 
 


 
 

萩原みのり(はぎわら・みのり)

生年月日:1997年3月6日(22歳)
出身地:愛知県
血液型:B型
 
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2013年にドラマ「放課後グルーヴ」(TBS系)で女優デビュー。主な出演作はドラマ「さよなら私」(NHK)、「表参道高校合唱部!」(TBS系)、「I”s(アイズ)」(BSスカパー!)、映画「正しいバスの見分け方」、「64 -ロクヨン-前編・後編」、「何者」、「昼顔」、「ハローグッバイ」、「ゆらり」など。映画「お嬢ちゃん」は9月28日(土)より新宿K’s cinemaにて公開以降、全国順次ロードショー。映画「転がるビー玉」、「サーティセブンセカンズ」、「街の上で」などが公開予定。
詳しい情報は公式HPへ
 
 

「お嬢ちゃん」

詳しい情報は「お嬢ちゃん」公式サイトへ
 

 

 

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