PICK UP ACTRESS 飯豊まりえ

PICK UP ACTRESS 飯豊まりえ

PHOTO=草刈雅之 HAIR&MAKE=本岡明浩
STYLING=徳永貴士 INTERVIEW=斉藤貴志

 
 

謎の島が舞台の青春ファンタジー
「いなくなれ、群青」でヒロイン

 
 

――捨てられた人たちが理由も知らずに来る階段島が舞台の映画「いなくなれ、群青」で、ヒロインの真辺由宇を演じました。原作の小説も読みましたか?

「私に合う作品と聞いて、ドキドキしながら原作を読みました。確かに真辺には、私と似ている部分がたくさんありました」。

――たとえば?

「(主人公の)七草に対する『なんで?』とか、言葉の使い方が一緒でした。友人が普通に原作を読んでいて、映画化が情報解禁される前から『実写化されたら真辺はまりえっぽい』と言われたんです。私は『この前、その真辺を演じてきたんだよな』と思いましたけど(笑)、自分の中では運命的な出会いだった気がします」。

――今まで演じた役にはない感覚?

「そうですね。自分ではないけど自分というか、『私も記憶をなくして階段島に行ったら、ああなるだろうな』と思いました。1カ月弱、東京と行き来しながら地方に泊まり込みで撮影していましたが、その間だけは自分でない人間でいるような感覚は、今まであまりなかったんです。役作りはしても、そこまで入り込んだのは初めてで、不思議な時間でした」。


――真辺は階段島で幼なじみの七草と再会しますが、七草役の横浜流星さんとも実際に幼なじみだったそうですね。

「そうなんです。小学生のときに同じ雑誌でモデルをやっていて、よくみんなで遊びました。高校も同じだったんですけど、そこは逆に関係はポッカリ空いていて、お芝居のお仕事を一緒にしたのは初めて。『どんなふうになっているかな?』と思ってたら、遊んでいた頃より全然大人になってました(笑)。もともと空手をやっていて、芯が強くて礼儀正しいのはブレてなかったんですけど、クランクアップのときの挨拶で、主演としての責任感をすごく持っていて、尊敬しました」。

――それだけ重なる部分が多いと、演技もやりやすいものでした?

「お話自体がすごく難しくて、結構悩みました。台本の台詞だと七草は真辺に冷たくて、突き放しているけど、真辺は『七草だけは自分を信じてくれる』という絶対的な信頼感を持っているんですね。恋愛感情ではないにせよ、冷たくされている相手にそこまで求めるのが難しかったです。私、個人的には七草を良いとは思ってなくて(笑)」。

――そこは役と裏腹に(笑)。

「横浜さんにもずーっと『何なの? もうちょっとやさしくしてくれても良くない? 会話が成り立たないんですけど』と言ってました(笑)。私自身はたぶん真辺そのままで、七草とは根本的に考え方が違う。でも、真辺はそんな七草を求めている。そこが難しくて……。『一緒にいちゃいけないんだ』とまで言ってくる七草を、なぜ真辺はあれほど求めるかがわかりませんでした」。

――特に苦労したシーンというと?

「最後のほうとか、七草に感情をぶつけるシーンは全部難しかったです。全然泣けないときもありました。監督からは『想いが伝わればいい。心でお芝居してください』と何度も言われました。あと私、目を逸らしたくなっちゃうんです。横浜さんは格闘技をやっていたから、じっと見つめられますけど、私は逆で、『何でですか?』って、ずっと目を合わせるお芝居も大変でした」。


――出来上がった映画では、真辺のまっすぐな想いが出てました。

「やっぱり横浜さんが本当の幼なじみで、あくびをすると『すごくブスな顔だったよ』とか遠慮なく言われましたけど(笑)、泣きのお芝居を何回もやり直させてもらって、普通なら申し訳なくなるところでドンと構えてくれていて……。そういうところは、やりやすかったです」。

――真辺がまりえさんと似ているという話に戻ると、まりえさんも理想主義ですか?

「そうですね。現実にそうなってなくても『絶対こうなる』と思ってます。真辺が『絶対に島を出るから』と、自分の中で確信を持っていたようなところは、私にもあります。でも、七草は島に来た時点で諦めていたじゃないですか」。

――七草は悲観的でした。

「そこは横浜さんに近い部分があります(笑)。だから、2人で『私たちは根本的に合わないね』と話してました(笑)」。


 
 

役と同じで「なんで?」が口ぐせで
小学生の頃と感覚は変わってません

 
 
――まりえさんも真辺のように「納得できない!」ということはありますか?

「すぐ『なんで? どうしてですか?』と言っちゃいます。『なんでですか?』というのが口ぐせみたいになってます」。

――たとえば、どんなときに?

「この映画でも、横浜さんは連日撮影で、私は休みの日があったんですね。みんな朝早くから夜まで頑張っているから、スーパーで大きなスイカを買って、切って差し入れに持って行ったんです。そしたら、横浜さんは『うっす。ありがとう』くらいで全然喜ばないんですよ(笑)。撮影がない私がわざわざスイカを持ってきたのに驚きもしない。『“おいしい”とかないの? 何でそんなに冷たいの? 納得できない!』ということがありました(笑)」。


――七草が真辺の倒れていた子犬とのエピソードを話すくだりがありました。

「私もそういう経験、あります。高校生の頃、子犬ではなくてサラリーマンの方が駅でいきなり倒れて頭から血を流していたことがあって、みんな素通りしてましたけど、私は『セカチュー(世界の中心で、愛をさけぶ)』みたいに『助けてください!』と叫んでました。『誰も助けないなんて、なんて冷たい世の中だ』と思いながら。だから、そのエピソードを読んだときも『わかる、わかる』となりました。原作の方は私のことを見ていたのかと思うくらい、真辺はすごく自分と近かったです」。

――真辺は「真っすぐで、正しく、凛々しい」という役ですが、そんなまりえさんだったら、重荷には感じませんでした?

「そうですね。ただ、出来上がった映画を観て、最初の真辺のイメージと変わった部分もありました」。

――横浜さんは幼なじみの頃とブレてなかったとのことですが、まりえさんは当時と根本的に変わったところはありますか?

「ないと思います。21歳になりましたけど、たぶん感覚は小学生のときのまま。人がケガをしたら自分の体がジンジン痛くなるし、血を見たらドキドキします」。

――ドラマで解剖医を演じていても(笑)。

「はい(笑)。そういう感覚が残っているし、喜怒哀楽は激しいし、『何も感じなくなった』ということはありません。人への興味がなくなったら、ちょっとイヤですね。私、良くも悪くも人の目が気になるんです。過剰に反応しちゃうこともあるけど、だからこそ気づけるものもある。そこはないより、あるほうがいいのかな?」。

――「いなくなれ、群青」を泊まり込みで撮影していて、現地での楽しみはありました?

「キャストのみんなと岩盤浴に行ってました。15分ずつ汗を流して『次行く? 私はまだ行くけど、もう行けない?』みたいな、長く入る勝負をずーっとやってました(笑)。デトックスして、お肌がツルッツルになって良かったです」。

――まりえさんは今年も映画、ドラマと出演作が相次いでますが、プライベートでもいいことはありましたか?

「何もありません(笑)。プライベートの時間はあまりないですね。お仕事があるのがいいことです。ドラマの『サイン―法医学者 柚木貴志の事件―』のメンバーで一度、ごはんを食べる会があって、西田(敏行)さんまで来てくださって、そのときは癒されました」。


――どんなごはんを食べたんですか?

「韓国料理です。韓国ドラマが原作の作品なので(笑)」。

――ハードスケジュールだと思いますが、ちゃんと寝られてますか?

「寝付きは悪いんですけど、寝てます(笑)。寝る間を惜しんで……ということはあまりしません」。

――何かで息抜きはしているんですか?

「ゲームですかね? でも、最近はあまりしてないかな。この前、早くお仕事が終わったときは、お世話になっているヘアメイクさん、スタイリストさんとカジュアルフレンチを食べました。やっぱり、ごはんを食べると元気が出ます(笑)」。

――では、秋に食べたいものは?

「さんまを焼いて、いっぱい食べたいです(笑)」。

――休日に出掛けるとしたら?

「今はちょっとハワイに行きたいです。お天気が悪い日が続くと、太陽が恋しくなりますね。朝の海でヨガをやりたい。あとは秋らしく、緑の多いところで果物狩りをしたいです」。


――『いなくなれ、群青』も秋に観ておきたい1本ですね。

「はい。誰でも忘れたい記憶って、ありますよね。でも、それは結局、自分が許せるか、許せないかの問題だと思うんです。許せなくて忘れたいことも、もし許せたら世界は変わって見える。自分の要らなくなった過去も、あって良かったものに思えるかもしれない。たとえば失恋しちゃうと、『出会わなければ良かった』と言う人がいますけど、この映画で現実逃避をして欲しいです。それで、また現実に戻ってください。次に何を感じるかは人それぞれでも、この映画を観たあとは、きっと感覚が変わると思います」。

 
 


 
 

飯豊まりえ(いいとよ・まりえ)

生年月日:1998年1月5日(21歳)
出身地:千葉県
血液型:B型

 
【CHECK IT】
モデルデビューから2012年より本格的に女優活動を開始。主な出演作はドラマ・映画「MARS~ただ、君を愛してる~」(日本テレビほか)、ドラマ「マジで航海してます。」(MBS・TBS系)、「花のち晴れ~花男 Next Season~」(TBS系)、映画「きょうのキラ君」、「暗黒女子」、「祈りの幕が下りる時」など。ドラマ「サイン-法医学者 柚木貴志の事件-」(テレビ朝日系/木曜21:00~)に出演中。情報番組「にじいろジーン」(カンテレ・フジテレビ系/土曜8:30~)にレギュラー出演中。「MORE」(集英社)、「Oggi」(小学館)でモデルとしても活躍中。映画「いなくなれ、群青」は9月6日(金)より全国ロードショー。映画「惡の華」が9月27日(金)より公開。主演映画「シライサン」が2020年1月10日(金)より公開。舞台「流れ星」(11月13日(水)~24(日)サンシャイン劇場。他に地方公演あり)に出演。
詳しい情報は公式HPへ
 
 

「いなくなれ、群青」

配給:KADOKAWA/エイベックス・ピクチャーズ
詳しい情報は「いなくなれ、群青」公式サイトへ
 

 

©河野裕/新潮社 ©2019 映画「いなくなれ、群青」製作委員会
 
 
直筆サイン入り自撮りチェキ応募はコチラ⇒