PICK UP ACTRESS 小島梨里杏

PICK UP ACTRESS 小島梨里杏

PHOTO=厚地健太郎 INTERVIEW=斉藤貴志

 
 

名作リニューアルの舞台「―初恋2018」に出演
トランスジェンダーたちのアパートの管理人役

 
 

――8月に「夏の終わりに」と銘打ったファンイベントが開催されましたが、今年の夏はどんな思い出ができました?

「あまり『夏だな』ってことはなかったです。そのイベントでまさに夏の終わりにみんなとの思い出ができたのが一番で、あとは海にちょっと行きました。半分仕事というか、写真の作品撮りでした」。

――泳いだわけではなくて?

「そうですね。どちらかというと、岩っぽいところにいました」。

――今年は本当に猛暑でした。

「暑すぎたから日に焼けるのがイヤで、中にいることが多かったです。仕事でロケがあると、いくら日焼け止めを塗っても吸収しちゃうので、今年は危ないと思っていました」。

――ファンイベントでは歌も披露したそうで。

「1部と2部があって2曲ずつ、ファンの方の前で初めて歌わせていただきました。」。


――計4曲というのは、歌手が本職ではない梨里杏さんには練習がなかなか大変だったと思います。

「でも元から私が大好きな曲で、カラオケではよく歌ってましたから。ただ、私は好きな音楽ジャンルが幅広いんです。最初に歌いたいと思った曲が皆さんにあまり知られてないかもしれないと思って、楽しんでもらえる曲と自分の好みでバランスを取って、選ばせていただきました」。

――いよいよ「―初恋2018」の初日が近づいてきました。舞台は今までもいろいろ出演してきましたが、特に思い出深い作品というと?

「毎回内容も役柄もまったく違いますけど、『お芝居をしたい』と思うきっかけのひとつになったのが、中学3年のときに初めて立った『XYX』という舞台で、忘れがたいです」。

――舞台ならではの面白みは、どんなことだと思いますか?

「お客さんが目の前にいて……という意味で“生身”なのが、一番の魅力だと思います。映像みたいにカットとかがないので、何が起こるかわからないじゃないですか。『トラブルこそ楽しい』みたいなところがあります」。

――実際、今までの舞台でトラブルが起こったことも?

「誰かがヘンなタイミングでコケたとか、そういうことですけどあったりはします。問題がひとつ起こるとツッコめるし、そこで物語が生まれる感じがあります」。

――映画やドラマで何百万の人に見られるより、舞台で何10人のお客さんに見られるほうが高まる……という役者さんもいますよね。

「私には映像とそこまでの差はないです。難しいと思うのは、映像だと合成とかは別にして、設定通りの環境で演技できるじゃないですか。舞台では場面転換できないこともあって、本当は公園なのにグレーなだけとかいうときに、想像力が要りますよね」。


――舞台だと物語が台本通り順を追って進むから、気持ちの流れを通せるのでやりやすいのでは?

「舞台をたくさんやられている役者さんは、そうおっしゃいますね。『映像は順番がゴチャゴチャで撮るんでしょう? 難しくない?』って。確かにそれが難しい部分もありますけど、舞台はずっと役の気持ちを保ってないといけない。私はそっちのほうが難しいように思います」。

――今回の「―初恋2018」はトランスジェンダーの人たちが暮らすアパートが舞台で、梨里杏さんは父親から管理人を受け継いだ役。どういう経緯で出演することになったんですか?

「演出の大江(祥彦)さんと、おととし12月の舞台『イライザ~深海にひそむ初恋~』でご一緒させていただいたんですね。今回は大江さんが『梨里杏にピッタリな役だから』とオファーしてくださいました」。

――自分でもピッタリだと思いました?

「どうなんだろう? 最初はまだ製本されてない台本を読ませていただいて『私は人からこう見られているのか』と思いました(笑)」。

――それはどういうところで?

「性格的なことだと、強い信念があってしっかりしているけど、ちょっと抜けている(笑)。ベースとしては明るくて元気。大江さんがそこを『ピッタリ』と思ったのかはわからなかったんですけど、稽古の2日目で、ちょっとその辺のことを言われて、そうなのかなと思いました」。


――作品として響いたところもありました?

「大きいことだとトランスジェンダーが絡んでいるお話で、私の友だちにもそういう人はいます。今の日本はわりとLGBTに対して寛容になってきているとはいえ、やっぱり偏見や差別は残っている中、そういうものをなくしていきたい、平等に自由に生きていきたい……と求めているところがすごくいいなと思いました。私が演じる結城小百合も含め、みんな信じているものや信じたいものを持っていて、でも、信じたいゆえに自由に生きていけないところもあったり……」。

――人の目を気にしてしまうから?

「そうです。心は女性で体は男性という人たちが本当は女装したくても、私が管理人のハイツ結城ではそういうことをしないルールがあるんです。『生まれたままの姿を受け入れていこう。その上で社会に受け入れてもらえるようにしよう』ということなんですけど、そのルールのために縛られてしまう部分もあります」。

 
 

大人になるより変わらないことを
大事にしていきたいと思ってます

 
 

――キャストにはモロ師岡さん、デビット伊東さんなどクセのある方たちが多いようですが、稽古の雰囲気はどんな感じですか?

「明るくて、笑いが多いです。大江さんの現場は結構そうなるみたい。前回の舞台のときも、恋愛ものだったのに『お客さんを飽きさせないように』と考えて、笑っていることが多かったです。今回は日常的なことも描かれていて、小さなトラブルやハプニングも起きて台本から面白かったんですけど、立ち稽古で実際に目の前で言い争いとかをしていると、『ああ、やってるよ』って楽しくなります。私はそのトラブルに入っていくより、『まあまあ』と制する役どころですけど、一緒に楽しんじゃうことがあります」。

――アドリブを振られたら、投げ返したり?

「そうですね。2回目の稽古から、もう皆さん、動きとかでアドリブをバンバン入れてきました。メッセージ性もありつつ、そういうところもある舞台です」。

――今のところ、演技的な壁に当たったりはなく?

「台本を読んだら、自分の中で『こっちの方向性もあるけど、こっちでも行ける』みたいな選択肢が結構あったんですね。管理人の役ということで、みんなをまとめなきゃいけない存在だと思っているので、そこをどう行くかは考えてましたけど、初日の本読みから、さっきお話しした“私にピッタリという話”があったり、『そのままでいいよ』と言われたりしました。私、東京の人なのに、なぜかたまに言葉がヘンな発音になるんですね(笑)。それも面白がってくれて、『間違ってないと信じ込んで言っているのもピッタリ』ということになりました」。


――やっぱり梨里杏さんの個性が生きる役になりそうですね。

「自分の役は客観的に見ようとしても、見られない部分がどうしてもあると思うんです。でも、人の役を見ていると『こうしたら面白い』と思うし、逆に私の役を『こういうイメージだね』と皆さんがいろいろ言ってくださるので、『そうか。そっちにしたほうが楽しいかな』と考えながら稽古をやっています」。

――稽古を重ねながら役ができていくのも、舞台ならではですね。タイトルにある「初恋」は、言葉のイメージだと中学生くらいの恋愛が思い浮かびますが、今回はそういうお話ではないみたいで。でも、梨里杏さん的に「初恋」のエッセンス的なものは感じますか?

「感じますね。私も『初恋』というタイトルなのに、物語が始まって話がどんどん進んでいっても、『どこに初恋要素が?』という感じだったんです。でも、よく観てくださると、『そうか。これが伏線だったか』みたいなことがあります。それで最終的にほっこりさせてくれると思います」。

――甘酸っぱいところもあったり?

「確かに初恋というと甘酸っぱいイメージですけど、そういうものより、ずっと傍にいてくれた人への好意に気づいたり、切に想っているところが大きい気がします」。

――連日の舞台に備えて、体力作りもしていますか?

「この舞台に備えて……というわけではなくて、今年25歳になるので、ちょっと体のことに気をつかい始めました。『スタイルキープのために何かしているんですか?』と聞かれることが多いんですけど、私はあまりそういうことをしてこなかった人間なんです」。


――なのに、そんなにスレンダーとは。

「ダンスは好きですけど、仲のいい人には『梨里杏がスポーツするの?』くらいな感じだったんです(笑)。でも、見た目のことはもちろん、体力があるに越したことはないと思ったので、ジムに通い始めました。パーソナルトレーニングで自分のすべきことを教わってやっている感じです。筋肉痛になりながら(笑)」。

――誕生日は12月なんですよね。

「そうです。25歳になるので、アラサーですよ(笑)」。

――いや、まだアラウンド30歳ではないでしょう(笑)。

「四捨五入したら30歳になるので(笑)」。

――別に四捨五入しなくても(笑)。

「誕生日が12月で1年の終わりじゃないですか。だから、来年が25歳の年という感覚があります。私にとって節目の1年になる気がしますね」。

――より大人になっていこうと?

「いや、別に大人を意識してはいません。そういう面も見せられたらいいなとは思いますけど、心は小さい頃からあまり変わってなかったりするので、そこを大事にしています。『過去を大事にするからこそ今が大切になる』というのをモットーにしているので」。

――むしろ、これからも変わらずに。

「変わらないところは変わらないでいたいです。だから、増し増しになっていけたらと思います」。


 
 


 
 

小島梨里杏(こじま・りりあ)

生年月日:1993年12月18日(24歳)
出身地:東京都

 
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2014年に「烈車戦隊トッキュウジャー」(テレビ朝日系)にミオ /トッキュウ3号役で出演して注目される。主な出演作はドラマ「表参道高校合唱部!」(TBS系)、「朝が来る」(東海テレビ・フジテレビ系)、「子連れ信兵衛2」(NHK BSプレミアム)、「3人のパパ」(TBS系)、映画「オオカミ少女と黒王子」、「人狼ゲーム プリズン・ブレイク」、「暗黒女子」ほか。「天才てれびくんYOU」(NHK Eテレ/月~木曜18:20~)に出演中。通信カラオケ配信番組「DAM CHANNEL」でMCを担当。舞台「―初恋2018」は東京芸術劇場シアターウエストで9月27日(木)~10月4日(木)に上演。その後、地方公演も上演。詳細は「―初恋2018」公式HPへ
 
詳しい情報は公式HPへ
 
 

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