PICK UP ACTRESS 松本妃代

PICK UP ACTRESS 松本妃代

PHOTO=厚地健太郎 STYLING=瀬川結美子 INTERVIEW=斉藤貴志

 
 

AbemaTVドラマ「#声だけ天使」で
ボーイッシュな声優専門学校の生徒役

 
 

――妃代(きよ)さんって本名なんですか?

「本名です。楊貴妃の“妃”から取って、品のあるしっかりした女性に育つようにと、親がつけたみたいです」。

――その通りの女性になったようで。

「いやいや。そんなことはないですけど、みんなが“マツキヨちゃん”と呼んで覚えてくださるので(笑)、良かったかなと思います」。

――出演中のドラマ「#声だけ天使」は声優を目指す人たちの群像劇ですが、その世界に興味はありました?

「アニメは結構観るんですけど、自分が声を当てるのはイメージしたことがありませんでした。実際に声を当てるシーンが多かったので、アニメを観ながら台詞を復唱したり、音声を消して自分の声だけ当てる練習をずーっとしていました」。

――自分の声について感じていたことはありますか?

「もともと歌をやっていましたけど、自分がどういう声なのか、しっかり意識したのは『#声だけ天使』からです。私が演じた茜は男声をやりたい女の子なので、声を低く作っていくことを意識しました」。


――オーディションで茜役に決まったそうですが、妃代さんの普段の声はそんなに低くはないですよね?

「そうですね。むしろ『声が高いね』と言われることもあるので、日常からすごく低くしゃべるようにしていました」。

――そして髪も、このボーイッシュな役のためにバッサリ切ってショートにしたとか。

「切りました。でも、ちょうど髪を切るタイミングがあったらいいなと思っていたので、何の抵抗もありませんでした。ワンレンロングでいることが多かったんですけど、20歳の頃にも一度ショートにしていたので」。

――髪が長い頃と生活が変わった部分はあります?

「服装がちょっと変わって、好きな帽子が似合うようになったと自分では思ってます。髪が長いときより、いろいろおしゃれが楽しめるようになりました」。

――声もそうですけど、茜は態度もクールでぶっきらぼうで、妃代さん自身の朗らかな雰囲気と全然違いますね。

「自分と正反対の役でした。この現場に入ったら男っぽい女の子でいようと思って、脚を開いて座ったりしてました。しゃべり方も男っぽくして『お前!』とか言っていたんですけど、撮影が全部終わって素に戻って、あの頃を思い出すと、普段と全然違う自分だった記憶があります」。


――演技的に大変だったことはありました?

「最初は自分の中から茜の要素になる部分を引き出していく作業をしました。自分と全然違う茜になるために集中する時間も毎日ちゃんと取っていたんですけど、回を重ねるにつれ、だんだん茜でいることが心地良くなりました。だから、最後まで大変だったことはないですね。低い声も出し続けていると慣れてきました」。

――声優を目指す仲間とボイスサービスサイト「イケボイ」を立ち上げて、サンプルで「この声でいじめられたいヤツ、リクエスト待ってるぜ」と録ったところなどは、すごく男前な感じでした。

「少年声を出されている女性声優さんのことをいろいろ調べて、そういうアニメをいっぱい観たりして、頑張ってやりました」。

――参考になったアニメはどの辺ですか?

「本編でS少年という男の子のキャラクターに声を当てるときに参考にしたのは、『黒執事』のシエルです。『NARUTO』みたいな元気な男の子よりは、陰のある声を意識しました」。

――茜は人物紹介では“サディスティック少女”となってましたが、根はやさしいみたいですね。

「そうなんです。言い方とかはキツくなってしまうんですけど、きっとすごく真面目な子だし、芯も強くて、ただ人との接し方がわからないんだと思います。(主人公の)ケンゾウに対しても、もっとやさしく『こうしたほうがいいんじゃない?』と言えばいいところを『違う! 違う!』って怒るシーンがあったり……」。

――ケンゾウが口にした“真心”を「死語だから」と一蹴していたのに、彼に声の指導をするときに「真心で」と言ってました。

「そこが茜の良いところでもあるのかな。ケンゾウの真心に一番影響されて、ケンゾウが引っ張っていってくれることに一番助けられているのが茜だったとも思います。真心についても『死語』と言いながら、自分で『そうかも』と思った部分もきっとあったんでしょうね。でも、やっぱり素直には言えなくて、照れ隠しをしていましたね」。


 
 

自分でワークショップも探したから
行動を起こす気持ちはわかりました

 
 

――これから茜の過去のこととかも出てくるんですか?

「そうですね。もう全話撮り終わったんですけど、茜の心にずーっと引っ掛かっている闇みたいなものが、後半になるにつれて出てきます。初めは人との接し方も笑い方もあまり上手じゃない女の子にしようと演じていたのを、どんどん変化をつけられたらと思ってやりました」。

――茜の夢に向けた葛藤も描かれたり?

「最初は学生として声優を目指していたのが、仲間ができて、自分もどんどん成長するにつれて本気になって、『じゃあ、どうする?』って行動を起こしていきます。事務所を探したり、茜の中で途中からプロ意識みたいなものが芽生えた気がします」。

――そういう気持ちは、女優を目指した妃代さんにも覚えがあるもの?

「それはありました。私は最初ダンスからこの世界に入ったんですけど、お芝居を意識してから、映画をたくさん観るようになったり、演技の引き出しを増やそうと考えたりするようになりました。自分でワークショップを探していた時期もあって、できることを少しずつやっていったから、茜の気持ちはすごくわかりましたし、茜を応援したくもなりました」。


――そもそも妃代さんはどんな流れで、女優を目指すようになったんですか?

「徐々に……でしたね。自分の中で表現の仕方として、いろいろなことを試してみたかったんです。歌、ダンス、モデル、演技、絵……とやってきた中で、一番しっくりきたのが、お芝居で表現することでした。自分の体と言葉を使って役になり切ることが、すごく楽しかったのを覚えています」。

――もともとはダンススクールに通っていたんですよね?

「小学生の頃から地元のダンススタジオでダンスを習っていました」。

――今回の劇中の声優専門学校とはジャンルも生徒の年齢も違いますが、重なるところもありますか?

「あります。ダンスもまず、立ち方や“自分をどう見せるか”みたいなところから勉強したので。声優学校のアングラ先生は教え方は奇抜ですけど、おっしゃっていることは理にかなっているというか、『そうだよな』っていつも納得がいきました」。

――たとえば、どんな教えが?

「教室の壁にも貼ってあったんですけど『ウソの世界でウソをつかない』とか、『芝居を始めたら自分で止めるな』とか、小さいことからいろいろと。あと、『シンデレラ』の授業があって。アングラ先生が継母役をやって、みんながシンデレラになって、ひたすら床を磨きながら自分の願いごとを言うんです。茜だったら、『絶対に声優になる!』とか。そうやって、有言実行というか、やらざるを得ない状況を自分で作って、人の前で『自分はこうなりたい』と口に出すのは、すごく大事だと思います」。


――妃代さん自身にも、有言実行したい願いごとはありますか?

「今年は面白いことをたくさんしたいです。女優をやっていても枠にハマったり、『これくらいでいいかな』というところに何となく収まってしまわず、自分からもちゃんと発信できる人になりたいです」。

――女優業は良い流れにはなってきているんでしょうけど。

「20歳くらいの頃とか、どうしたらいいのか悩んでいた時期も長かったから、今はこうしてオーディションをいろいろ受けさせてもらって、役をいただけるようになって、少しずつでも前に進めているとは思います」。

――妃代さんはSNSにも上げてる絵とか英会話とか趣味・特技が多彩ですが、仕事と結びつくかは別として、新たに興味を持ってることはあります?

「今は絵を描くことがすごく楽しいです。お芝居するのとは違う脳を使っていて、描いているときは自分1人の世界。本当に無心になれます。長いと7時間とか8時間とか集中して、自分が納得いくまでひとつのことを描き続けるので、オフがあって切り替えたいときに描きに行ったりしています」。

――7~8時間もかけるんですね。

「3時間で終わるときもあったり、いろいろですけど、お休みの日はいつも絵を描いてます」。

――ツイッターで「#声だけ天使」に関して「仲間がいるっていいなって思ってる」と書いてましたが、どんなときにそう思いました?

「私自身、結構人見知りで、現場でも人と仲良くなるのに時間がかかってしまうんです。今回は3カ月ずっとイケボイのメンバーと一緒にいて、今はみんな仲良いですけど、実は人見知りの集まりでした(笑)。気をつかい合って『こう思われるから、やめておこう』とお互いに引いていた感じです。それが仲良くなると、誰かがしんどそうだったら声を掛けてあげたり、シリアスなシーンの前は空気を読んでサッと離れて、1人にしてあげたり……。そういうことを、みんなが『やろう』と言わなくても自然にやって、以心伝心で助け合い励まし合える存在ができたのが、すごくうれしかったです」。


 
 


 
 

松本妃代(まつもと・きよ)

生年月日:1995年3月20日(22歳)
出身地:兵庫県
血液型:AB型
 
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ダンス&ヴォーカルユニットやモデルとして活動したのち、2016年にドラマ「ひと夏の隣人」(イマジカBS)で本格的に女優業を開始。これまでの主な出演作は映画「吉田類の「今宵、ほろ酔い酒場で」」、「ろんぐ・ぐっどばい」、「あさひなぐ」、ドラマ「コードネームミラージュ」(テレビ東京系)など。ドラマ「#声だけ天使」(AbemaTV/月曜22時~)、「賭ケグルイ」(MBS/日曜24:50~、TBS/火曜25:28~)に出演中。
詳しい情報は公式HP
 
 

「#声だけ天使」

詳しい情報は公式HP
 

 

 

 
 

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