PICK UP ACTRESS 村田寛奈

PICK UP ACTRESS 村田寛奈

PHOTO=小澤太一 INTERVIEW=斉藤貴志

 
 

台詞ナシの舞台「ギア-GEAR-」で
人形になり切り動きで感情も表現

 
 

――台詞をまったく使わない舞台「ギア-GEAR-」の千葉公演で、人間型ロボットが働く元おもちゃ工場に現れた人形のドールを演じていますが、出演が決まってから過去の公演の映像を観たりしたんですか?

「京都での舞台を観させていただきました。最新のプロジェクションマッピングを使っていたり、パフォーマーの皆さんがブレイクダンスやジャグリングやマジックを見せていたり、『こういう演劇があったんや!』って、すごく楽しかったです。リピーターの方が多いと聞きましたけど、何回も観たくなる気持ちはわかりました」。

――京都で6年に渡るロングランになった人気公演で楽しかったかと思いますが、自分が演じると考えると、ハードルの高さも感じませんでした?

「初めて観たときは単純にお客さんとして楽しんじゃいましたけど、それから何回か観させてもらって、『自分がこういうことをやるんだ……』って見方が変わってきました。プレッシャーと『できるかな?』という不安が大きくなりました」。

――台詞がまったくない舞台ということですが……。

「台詞がないので動きを覚えるのがメインになりますけど、動きに全部台詞が付いているんです。しゃべらなくても意味があるというか、一歩歩くだけでも何かモノを取るだけでも、ひとつひとつ言葉を乗せているんです」。


――言葉を発しなくても、そういう台詞が台本に載っているということですか?

「いや、台本にはなくて、京都公演のドール役の兵頭祐香さんに『こうやって演じている』ということで教えてもらいました。まず動きを覚えないと始まりませんけど、そこにしゃべらなくても自分の中で台詞を乗せるのにすごく苦労しました。動きだけだとなかなか感情が伝わらない、何を考えてそう動いているのかわかってもらえない……というのが第一関門でした」。

――本番の舞台では、逆に台詞がなくても不思議なくらい物語がわかりました。

「あと、ドールの動きは特殊なんです。普通に生きていたら使わない筋肉を動かすんですが、それがなかなかうまくいかなくて……。動きすぎると人間に見えちゃう。動かなすぎるとロボットに見えちゃう。人形なので、かわいく見えないといけないんです。ロボットたちの中に異質なドールが落ちてきたストーリーだから、特別なイメージを付けることが必要で、それを人形らしい動きで表すのが難しくて、ひと通り動きが体に入ってからも、繰り返し練習しました」。

――体のどこかが痛くなる感じですか?

「演じる人によって違うと思いますけど、私は二の腕の周りが稽古のあとに必ず痛くなりました。あとは背中とか、おもちゃの人形で釘が打ってある部分が痛かった感じです」。

――なるほど。最初に工場に落ちてきた場面は、特に人形らしさが求められたわけですよね。

「そうですね。ドールがまだ体を自由に動かせなかったので。人間が普通に歩くように歩けないところや、音が鳴っているのに合わせられないところは葛藤しました。ドールにパワーが巡って動き出すまではただの人形なので、自分で立つこともできずに支えてもらって、まばたきもしません」。


――ステージの盆が回っている上で、机をリズムを取って叩きながら飛び乗ったりもするところも、大変ではないですか?

「あれは本当に難しかったです。お客さんはただステージが回っているだけに見えるかもしれませんけど、遠心力が付いて焦点が合わなくてセンターがわからないから、自分がどこにいるかもわからない。さらに、すごく振り回されるから、稽古で最初に回ったときは一歩も動けませんでした。『ヤバイ!』って机にしがみつくしかなくて、何回も何回も盆を回して練習して、やっと感覚がつかめた感じです」。

――机の上にもヒョイと飛び乗れるように?

「最初は『よいしょ、よいしょ』って感じでしたけど(笑)、今はだいぶ落ち着いてパッと乗れるようになりました。あそこは初めから、いろいろな方に『難しい』と聞いていて、祐香さんにも『最初は誰でも立ち上がれないくらいしんどい』と言われてました。実際に盆が回ったら本当に立ち上がれなくて、『ムリです!』という感じでした(笑)。『慣れるから大丈夫。本当に危なかったら盆を止めるし、周りの人も助けてくれるので、思い切ってやって』と言われましたけど、最初は怖かったですね」。


――やっぱり怖さはあったと。

「怖いことは怖いです。稽古のときは明るいけど本番は暗いですし、風とか照明とか特殊効果でいろいろなものが加わって前が見えない。本当にワケがわからなくなります(笑)。さっき言ったように“動きに言葉を乗せる”というテーマはあっても、それどころじゃなかったですね。もう動くのに必死。でも公演を重ねるごとに自分の中で動きをつかめて、やりやすくなってきたのはロングランならではだと思います。1回に1コは収穫があります」。

――ブログに「毎日研究や分析をしながらパソコンとにらめっこ」とありました。

「公演のあとにみんなで反省会をしてから動画を観たり、祐香さんや千葉公演の別のキャストを観させてもらって、『ここはどうしたらいいんだろう?』『どうやったら面白くなるかな?』と、メモをしながらずーっと考えてます。お風呂の中でもスマホで観ています」。

――その成果もあって、今は楽しくやれている感じですか?

「もちろん公演は楽しいですし、共演者の方のすごいブレイクダンスやマジックも間近で見られて、1時間半があっという間です。でも公演後に反省会をして、みんなで『ここはもっとこうしたほうが良くなる』とか長期的に考えて言い合っているので、そこで見えてくる課題もあって、考えることもたくさん出てきます。1週間とかで終わる公演ではないし、楽しんでいるだけではダメという感じです」。

 
 

ちょこちょこ動いて飛び跳ねて
関西人らしくボケも入れて(笑)

 
 

――ダンスに関しては、寛奈さんのもともとのスキルが「ギア」でも生きていますか?

「振付もありますし、動きを覚えるのもダンスのような感覚ですけど、プロジェクションマッピングや映像に合わせて踊るから、ダンスというより演技の表現をしている感覚が強いですね。踊っているようで台詞をしゃべっている感じです。きれいに踊りすぎると『ダンスになってる』と言われますし、9nineで踊る感覚とは全然違います。やっぱり踊りにもひとつひとつ台詞が乗ってるというのが、私の解釈です」。

――特にドールは台詞がない中で、辛い想いとかも表現しないといけなくて。

「ストーリーを伝える軸になる役柄で、90分の中で喜怒哀楽をすべて出し切ります。自分の内面からフツフツ出てくるものが大事で、たとえば悲しいところで泣いてる顔はできるけど、ウソにならないように……というのはすごく考えています。台詞がなくても、お客さんに『この子は今こうしゃべったんだろうな』と思ってもらいたいです」。

――本当にレベルの高い演技を求められますね。

「高いですね。言葉を使えれば『うん』と言えばいいのに、言えない苦しさがあります。でも、京都公演でもよく言われていたように『台詞はないけど言葉の大切さを知りました』みたいな感想がアンケートに書かれていると、『ちゃんと伝わっているな』と思えます」。


――毎回緊張を強いられる場面はありますか?

「ドールの登場シーンですね。まばたきができないとか物理的なこともありますし、まったく何も見えないまま舞台にバッと出るので『今回はどういう空気感なんだろう?』という感じです。人形なので動けない、しゃべれない、息もあまりできないから、心臓がドキドキして鳴りやまないんです。スーッと深呼吸できたら楽になるのに、できないからそのまま。そこの出だしを乗り越えたら、ドールはいろいろなものをブンブン振り回す役なので、『楽しくいこう』って気持ちが大きくなります。あとはポイントごとに『ここは引き締めていこう』と、自分で緊張感を持つようにしています」。

――9nineや寛奈さんのファンだけが観ているわけではない、ということも大きいですか?

「すごく意識します。9nineファンの方やアイドルが好きな方、私のことをちょっと知っている方も来てくれますけど、家族や子ども連れのお客さんが多い印象があるので。私のことを知らない方に、この舞台の間は『ギア』のドールとして見てもらえるようにしたいと思っています」。

――そんなこんなで、すごくエネルギーを使う舞台なんでしょうね?

「めっちゃお腹がすきます(笑)。なので、帰ったら絶対ちゃんとごはんを食べます。いつもなら『遅いからいいや』って食べないときもありますけど、『ギア』のあとはコンビニで何かしら買ってでも食べます」。

――「21時以降に食べると太る」とか気にせずに?

「普段なら『やめておこう』と思いますけど、それどころじゃないので(笑)。本当にエネルギーを使うんでしょうね。そういうときは何を食べても幸せです」。

――ちなみに、寛奈さんはお気に入りのドール=人形はありますか?

「今、一人暮らしですけど、前に住んでいた家から唯一新居に持ってきた、ボールみたいな真ん丸のペンギンのぬいぐるみがあります。高3のときにハワイの修学旅行に仕事で行けなくて、クラスメイトの子が『ひろに似てる』って買ってきてくれたんです。めっちゃ大切にしていたわけでもないですけど、近くに置いておくと安心するので連れてきました(笑)」。

――先日はドラマ「噂の女」にも出演しましたが、女優業も増えていきそうですか?

「進んでやっていきたい気持ちはあります。お芝居は始めたばかりで、これから勉強していく感じですけど、ドラマや舞台は好きだし楽しいので、踏み込んでいきたいと思います」。

――「ギア」の公演も続きますが、ドール役は4人のキャストで回している中で、寛奈さんらしさはどう出していこうと考えていますか?

「それも模索しているところで、『ギア』にデビューする前はフリフリのかわいい感じで行こうと思ってました。でも、やってみたらそっちより、アンケートで『ちょこちょこ動いていてかわいかった』みたいに書かれていることが多くて……。たぶん私は身長が低いので、何をするかわからない赤ちゃんみたいで(笑)、そう見えるんだと思います」。


――わかる気がします。

「同じドール役のピンキーさん(藤咲彩音/でんぱ組.inc)はめっちゃハッチャケたイメージで、亀井(理那)さんは身長がスラッと高くて大人な感じだから、私は小刻みにちょこちょこして、バタバタ飛び跳ねたりしているのがいいのかなと思います。慌ただしいくらい元気で、目で追っていたら何をするかわからない困った子……みたいに見えたらいいのかなと思いました」。

――お客さんの反応も受けて、方向転換したんですね。

「そうです。最初はそんな元気でもなくて、おとなしくやっていた部分もあったんです。最近は結構ハジけて、キャストの方に『アドリブを入れてもいいんじゃない?』と言われて、ボケたりもしています。関西人が出始めました(笑)」。

――台詞ナシでボケを?

「舞台の工場にある小道具でモノボケしたり、自分の頭を叩いたり、冷たい顔をしてみたり……。『この子、めっちゃ自由にやってるな』と伝わればいいと思ってます。でも、すごくハードルが高いですね。台詞があればボケたりツッコんだりしやすいけど、動きだけだとモノや人を使うことを即座に考えるのが難しいし、言葉なら簡単なアドリブも伝わり辛くてスベっちゃったり(笑)」。

――スベることもありますか。

「全然あります。でも、挑戦だなと思ってます」。


――身長のことは、以前は「伸びたい」とよく話してましたが……。

「もうムリですね。さすがに諦めました(笑)。今は小さいのを個性として使うしかない感じですけど、『ギア』のキャストでも私はたぶん一番小さくて、人形として異質な存在に見えやすいとプラスに捉えてます。特権だなと思います」。

 


 
 

村田寛奈(むらた・ひろな)

生年月日:1996年12月29日(21歳)
出身地:兵庫県
血液型:AB型

【CHECK IT】
2010年9月に9nineに加入し、同年12月に「Cross Over」でCDデビュー。女優として舞台「ローファーズハイ!! Vol.1」、「ローファーズハイ!! Vol.3」、ドラマ「噂の女」(BSジャパン)などに出演。ノンバーバルパフォーマンス「ギア-GEAR-」East Version(千葉ポートシアター)にドール役で出演中。出演日は「ギア」公式サイト参照。
詳しい情報は公式HP
「ギア-GEAR-」East Version公式HP
 
 
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