PICK UP ACTRESS 平祐奈

PICK UP ACTRESS 平祐奈

PHOTO=小澤太一 INTERVIEW=斉藤貴志

 
 

ドラマ「女川 いのちの坂道」に主演
震災後の故郷に向き合う役を等身大で熱演

 
 

――去年の11月で20歳になったんですよね?

「はい。いざなってみたら、何も変わりませんでした(笑)。でも、『何歳?』と聞かれたときに『20歳です』と言うのは、毎回ワクワクします」。

――誕生日の午前0時、20歳になった瞬間は何をしてました?

「たいしたことはしてません。ただ、時計が11月12日の0:00となった瞬間を写真に撮って、『20歳になった!』ってジャンプしました(笑)」。

――祐奈さんはもともと、しっかり者だったようですが、名実共に大人になってきている感覚はあります?

「まったくないですね。お酒を飲んだりもしないので」。

――炭酸は飲むようになったんでしたっけ?

「飲むことは飲みますけど、友だちとごはんに行ったときに乾杯するくらいです。普通はお酒でするんでしょうけど、私にとっては、炭酸がお酒みたいなものなので(笑)。最初に炭酸を飲んだときは、むせてセキが止まらなくなったんですよ。最近は飲めるときと飲めないときがあって、まだコップ1杯を飲み切ったことはないです」。


――9日に放送されるドラマ「女川 いのちの坂道」では、宮城県女川町で小学校の卒業間際に東日本大震災で被災した19歳の女性を演じました。祐奈さんはあの地震の日は……。

「東京にいました。私も小学6年生で、ちょうど学校が休みで、喉の調子が悪かったから母と病院に行ってました。その病院がタワーマンションの2階にあって、待合室にいたら、外に1本だけあった木が急に揺れ出したんですね。近くにいたおばあちゃんが『あの木、揺れてるわよね』と言っているのを聞いて、立ち上がろうとした瞬間、グラーッと大きな揺れが来て、すごく驚きました」。

――祐奈さんが演じた咲は、ダンサーを夢見て上京して1年半。東京で出会った彼氏と共に生まれ育った故郷を旅して、あの日の記憶を辿ります。咲の記憶を自分のものにするために、女川のことを調べたりしました?

「周りに東北出身で年の近い女の子がいるので、『あのときはどうだったの?』と聞いたりしました。私にとっても自分が生まれる前の話とかではなくて、東北ほどの被害はなかったけど東京で地震に遭って、津波もニュースで見たので、あの日の記憶は鮮明にあります。それも思い出しながら演じました」。

――実際にたくさんの方が被災しただけに、軽々しくは演じられない役だったかと思いますが、劇中の咲は確かにあの日女川にいたように感じられて、その分、観ていて辛くもなりました。

「確かに重い気持ちのある役柄で、『どうなるんだろう?』という不安はすごくありました。咲は芯が強い女の子だけど、お母さんが行方不明のままで、相当いろいろなことを考えていて、複雑な心境でもあるし……。私が演じる一方で、ドキュメンタリーでもあるので、『自然な咲でありたい』と思いながら女川に行ったら、土地の空気や景色の中で、すごく不思議なことに台詞がスラスラ出てきました。言葉を発するだけで、泣けてきちゃったんです」。


――現地で被災した役が憑依した感じ?

「はい。『女川で実際に被災した女の子たちが、自分に舞い降りてくれたんじゃないか……』という気分でした」。

――現地の光景を目の当たりにして、呼び起こされるものもあったかも。

「それはあったと思います。事前に検索すると、女川や宮城県の当時の映像が出てきましたけど、現地に行ったら、その映像からは想像できないくらい、きれいに復興していたり、一方で、旧女川交番が倒れたまま残されていたり……。自分で走りながら、女川の街を探検したりもしました」。

――咲は彼氏にも、お母さんが行方不明なことを言えずにいました。そういった心境も理解できました?

「東日本大震災以外にも自然災害はあったし、去年は広島の原爆のドラマ(夕凪の街 桜の国2018)にも出させていただきましたけど、そういう日本人として知らなきゃいけないことはたくさんあるのに、無関心な人が多くなっているように感じるんです。だから、咲がそういう話をできないのはすごくわかります。私は母に『大震災が起きた3月11日の14時46分には手を合わせてね』と言われているので、どこにいてもお仕事の現場でも、それはするようにしています。関心が薄れて伝える人も少なくなっているからこそ、1人でも多くの人に、ちゃんとこのドラマを届けたいと思いました」。

――8年経ってもお母さんの遺品を探し続けるお父さんに怒ったところは、複雑な感情でしたよね。

「切ないですね。お父さんの気持ちもわかるし、咲の気持ちもわかるし……」。

――咲は「いい加減、前を向いてほしい」と言いながら、自分が過去に捉われているようでもあって……。

「そうですね。だけど、彼氏の翔太が『供養』と口にすると『お母さんが死んだって決めつけないでよ!』と言っていたのも、わかる気がしました」。


――いずれにしても、咲と本当に同化していたんですね。

「あの撮影期間は、ちゃんと咲と向き合えていられたとは思います。翔太役の平埜生成さんが、毎回、台詞とは思えないような力のある言葉を掛けてくれたおかげで、感情が揺れたりもしました。咲が私と等身大の20歳になる直前の女の子なので、ダンスを頑張っているところに共感できたりもしました」。

 
 

常にドローンで撮影している中で
演技への集中力が鍛えられました

 
 

――このドラマは全編4Kドローンで撮影されました。演じる側には、通常のドラマと違う部分はありましたか?

「初めての試みだし、ドローンと聞いて音が大きいイメージがあったので、『どうなるんだろう?』と思っていました。実際に撮影中はずっとドローンが飛んでいて、音はすごかったんですけど、やっていたら、私はあまり気になりませんでした。むしろ、やり甲斐があって、『こっちのほうがいい』と思う部分もありました」。

――と言うと?

「どこで撮っていても、切ないシーンでも泣かないといけない場面でも、ドローンの音が常に聞こえていたので、集中力が鍛えられました。最近は普通のドラマの撮影だと物足りないと思うくらいになってしまったので(笑)、これからどんなロケでも工事中の現場だとしても、何も怖がらずにできる気がします」。

――なるほど。あと、ドローンで撮っているとお芝居を細かく止めないでしょうから、流れで演じられたのも合っていたのかも。

「確かにそれはあります。全部一連の気持ちでずーっとやったので。本当に貴重な経験でした」。


――地元の友だち役で出演した岡本夏美さんとは、おはガールちゅ!ちゅ!ちゅ!以来、5年ぶりの共演だったそうですね。

「プライベートでは会ってましたけど、やっと作品で共演できました。ドラマの中でも親友の役だったので、隣りにいると安心感がありましたね。『地元に本当にこういう子はいるな』という感じで演じてくれました」。

――おはガール時代の思い出話もしました?

「会うたびに『おはスタ』の頃の話は絶対出ちゃいます。女川では撮影が早く終わると、みんなで街でごはんを食べたんですけど、そのごはん屋さんにカラオケがあって、おはガールちゅ!ちゅ!ちゅ!の『こいしょ!!!』や『夢ふうせん』を入れて、一緒に歌ったりしました(笑)」。

――祐奈さんの中で中学生時代の「おはスタ」での経験が、今も生きている部分はありますか?

「とってもあります。生放送だったので『発言したことは全部テレビで流れる』という緊張感を持つことと、朝の早起きが鍛えられました(笑)」。

――ドラマの最後には、祐奈さんが踊るシーンがあります。

「あれはコンテンポラリーダンスで、初めてのチャレンジでした。とっても難しかったです。基礎の段階から先生が骨がないような感じで動いていたんですが、そういうダンスは知りませんでした。咲の心情をダンスで表すということだったので、監督ともいろいろ話し合って、『ここはお母さんを想って踊って』とか『力強い表情を出してほしい』とか、監督が言ってくださったことも考えながら、踊りました」。


――それもいざ踊ったら、憑依した感じ?

「そうですね。津波に流された咲のおうちがあったところとか、海とか体育館とか、いろいろな場所で踊って、感じたことはありました」。

――いろいろな意味で今までにない経験が多かったようですが、完成したドラマを観て、改めて感じたことはありますか?

「私自身が20歳になる前に、この撮影を経験できて良かったと思いました。あの地震を振り返って、『これからもずっと考えていかなきゃいけない。生まれてくる子どもたちにちゃんと話していきたい』という気持ちになりました。津波が来た場所に『いのちの石碑』を建てる活動は素晴らしいし、当時小学生だった私と同い年の方たちがやっているのは本当に尊敬します。1人でも多くの方が命を大事にできるように、私も広めていきたいです」。

――そして、また新しい年度が始まります。

「この前、大学に入ったと思ったら、あっという間に3年生です。ゼミが始まったりもするので、楽しみというより、ちゃんと卒業したい気持ちが強くて、ちょっと焦りがあります(笑)」。

――仕事との両立は大変だと思いますが、春の楽しみはありますか?

「最近、姪っ子や甥っ子がどんどん大きくなって、一緒にスイーツを作ったりしているんですけど、春はピクニックをしたいです。お弁当を作って、公園かどこかに行けたらいいなと思います」。

 
 


 
 

平祐奈(たいら・ゆうな)

生年月日:1998年11月12日(20歳)
出身地:兵庫県
血液型:O型
 
 
【CHECK IT】
2011年に映画「奇跡」で女優デビュー。これまでに映画「案山子とラケット~亜季と珠子の夏休み~」、「ReLIFE リライフ」、「未成年だけどコドモじゃない」、「honey」などに主演。ドラマ「JKは雪女」(MBS・TBS系)、「立花登青春手控え」(NHK BSプレミアム)、「ミューブ♪~秘密の歌園~」(メ~テレ)などに出演。「もしもツアーズ」(フジテレビ/土曜18:30~)に準レギュラーで出演中。映画「凜‐りん‐」が公開中。3月9日(土)放送のドラマ「女川 いのちの坂道」(NHK BSプレミアム/22時~)に主演。2019年公開予定の映画「10万分の1」に主演。
詳しい情報は公式HPへ
 
 

ドラマ「女川 いのちの坂道」

NHK BSプレミアム 3月9日(土)22 :00~22:59
【再放送】
NHK BS4K 3月20日(水)15 :00~16:09、3月27日(水)12:45~13:54
詳しい情報はドラマ「女川 いのちの坂道」公式HPへ
 

 

 

 
 

直筆サイン入り自撮りチェキ応募はコチラ⇒