2015年 邦画ベスト10

僕は、知る人ぞ知る新参者の「映画マニア」である。自分のツイッターでも邦画を鑑賞したあとには必ず採点と寸評をつぶやいている。映画マニアになったきっかけは、前職であったB.L.T.編集長時代にさかのぼる。当時、ドラマから新人女優が生まれずらくなり、新人女優の活躍の場は映画へと移る。「井上さん、うちの〇〇がこの映画に出ますので是非観てください」と言われることが多くなったのもこの時期だと思う。映画界も出版業界同様、好調というわけではなかったが、シネコンの登場によって、より多くの作品が世の中に提供されるようになったのは事実。2010年当時、半分は仕事、半分は趣味として新人女優を追い求め鑑賞するようになった映画。2010年117本からはじまり、次第に邦画だけにとどまらなくなり、2011年215本。2012年218本。2013年406本。2014年205本。そして2015年は現時点(12月29日時点)112本とたどってきた。今年が異常に少ないのは、前職を辞め株式会社HUSTLE PRESSの立ち上げがあったためである。とはいえ2013年の406本は常軌を逸していましたね。毎日絶対に1本観るのと、休日は5本観るのが当たり前の状況。これでもきちんと仕事(編集長業務)やってましたんで、睡眠時間が2時間だったことも理解してもらえるかと思います。趣味のためには睡眠時間をも削る。これはみなさんも同じでしょうが、まさにそれでした。あと、僕には映画鑑賞の流儀がありました。招待された「試写会」には行かず(試写会はライターに任せ女優さんへのインタビュー時には問題ない状態に)、公開されてから自分でお金を払って劇場に観に行くというものでした。やはり、観たあとに批評したいので、自分でお金を払って鑑賞し、その料金に見合った価値があったかを計るためにもそうしていました。2010年は鑑賞した映画を一覧にしていただけでしたが、2011年からは点数をつけるようになり、2012年からは寸評を友人のメールに一方的に送るという迷惑行為に走っていました。この頃「映画のコラムでも執筆したら?」と言われたこともあったのですが「あくまで趣味である」とお断りした経緯もある。2011年からの得点などが残っていたので、ざっと紹介する。
 
 

2011年<鑑賞作品215本>

100点 41本
最高作品【洋画】
ソーシャル・ネットワーク 100点

最高作品【邦画】
聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実- 100点

最低作品【邦画】
さや侍 3点
 
 

2012年<鑑賞作品218本>

100点 65本
最高作品【洋画】
レ・ミゼラブル 100点
最強のふたり 100点
カエル少年失踪殺人事件 100点
トガニ 幼き瞳の告発 100点

最高作品【邦画】
鍵泥棒のメソッド 100点
ALWAYS 三丁目の夕日’64 100点
かぞくのくに 100点

最低作品
踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望 10点
 
 

2013年<鑑賞作品406本>

100点 93本
最高作品【洋画】
偽りなき者 100点
キャプテン・フィリップス 100点
終戦のエンペラー 100点
容疑者X 天才数学者のアリバイ 100点

最高作品【邦画】
カノジョは嘘を愛しすぎてる 100点
陽だまりの彼女 100点
箱入り息子の恋 100点
そして父になる 100点

最高作品【アニメ】
劇場版 花咲くいろは HOME SWEET HOME 100点

最低作品
【洋画】劇場版 水滸伝 20点
【アニメ】劇場版トリコ 美食神の超食宝(スペシャルメニュー) 20点
 
 

2014年<鑑賞作品205本>

100点 44本
最高作品【洋画】
ジャージー・ボーイズ 100点
チョコレートドーナツ 100点
マダム・マロリーと魔法のスパイス 100点

最高作品【邦画】
アオハライド 100点
福福荘の福ちゃん 100点
紙の月 100点

最高作品【アニメ】
ベイマックス 100点

最低作品【洋画】
レゴ(R)ムービー 30点
 
 
基本、僕は評論家ではないので、評価は甘口です。
 
さぁ、そんな映画マニアである僕が今年の映画(今回はアニメ作品を含む邦画に限る)ベスト10を勝手に発表します。
 
 

1位 くちびるに歌を(2月28日公開)

 
感動につぐ感動のシーンのオンパレード。三木孝浩監督の渾身の一作。舞台となるのは田舎(長崎県五島列島)の学校の合唱部。田舎っぽい各生徒のキャスティングが本当に妙。ナズナ役の恒松祐里はベストチョイス。サトル役の下田翔大も最高。こういう作品で、有名どころを持ってこず、今からの子で配役を決めたことに好感が持てた。恒松祐里はもちろんのこと、葵わかな、山口まゆと、今後も成長が期待される新進の女優陣のキャストはみごとの一言。ストーリーもわかりやすく、終盤にかけて泣いて、泣いて、泣いて、泣いて、泣いた。「ただ、好きってだけじゃダメですか?」という純粋なナズナの台詞。「先生、生きてる意味ってなんですか?」というサトルの台詞。大人になって挫折を味わった新垣結衣演じるピアニストの「もう私は弾けない」という状況。色々な場面が当時の自分(B.L.T.編集長を辞めようと決意した時期)にシンクロし、感動は増すばかり。やはり、純粋な気持ちが大人になっても必要なんだと。自分には休養し純粋な気持ちを取り戻すことが必要なんだと勇気をもらった作品。「15歳の自分が30歳の自分に手紙を書く」という歌詞のアンジェラ・アキの「手紙」はいい曲ですね。恒松祐里のHUSTLE PRESSグラビアはこちら
 
 

2位 俺物語!!(10月31日公開)

 
原作は未読のまま鑑賞。もう、この作品においては永野芽郁。最初から最後まで永野芽郁。というよりも、永野芽郁の可愛さが爆発している作品です。いかつい顔面とピュアなハートを持つ剛田猛男を演じた鈴木亮平の好演はもちろん大切なのだが、永野芽郁というひとりの女優をここまで押し上げた作品も稀だと思う。初回の鑑賞では、永野芽郁ってどんな子なんだろう?と思っていたくらいの興味でしたが、なんと翌日も永野芽郁に会いたくなって、二日連続で鑑賞していました。永野芽郁演じる大和凛子がこれまたピュアガールなんですが、作品の演出上、彼女のアップシーンがやたらに多様されているのが、脳裏にこびりつきいつの間にかヒロイン永野芽郁とデートゲームに入り込んでしまった錯覚をももたらします。その後、彼女は全国高校サッカー選手権大会11代目応援マネージャーにも選ばれ、2016年1月スタートの〝月9〟ドラマ「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」(フジテレビ系)にも出演することが決まり、一気にブレイク街道を駆け上ることになるだろう。HUSTLE PRESS永野芽郁インタビューはこちら
 
 

3位 心が叫びたがってるんだ。(9月19日公開)

 
「あの花」の制作チームが再結集した劇場用アニメ。予告編を観たときは、ちょっとおどろおどろしい作品内容なのかなぁと思っていたのだが、そんなことはなくどストレートの感動作品でした。おしゃべりだったひとりの少女が何気なく言った「ひとこと」から家族が崩壊し、喋れなくなってしまう。その少女・成瀬順が高校生になったとき転機が訪れる。
高校の活動として行われる「ふれあい交流会」でミュージカルを行うことになるのである。少女のころのトラウマを抱え声が出ない成瀬順は、歌にことばをのせると声がでるのだ。
徐々に仲間が増え、心を通い合わせ、そしてついにミュージカル当日を迎える。この辺りで涙ものでした……。入場時にもらった入場特典の「ミュージカルパンフレット」の意味がようやくつかめた瞬間でもあった。長井龍雪監督は心の揺れを表現することを得意としているようだ。今作品でも少年少女の心の傷や葛藤、切なさの表現方法はみごととしか言いようがない。11月1日に興行収入10億円の大台を突破。舞台になった埼玉県の秩父市が再度盛り上がりをみせ「ここさけ」ブームを巻き起こしただけのことはある。エンディングソングになっていた乃木坂46の「今、話したい誰かがいる」がこれまたベストマッチし、最強の作品となっていた。
 
 

4位 orange オレンジ(12月12日公開)

 
現在公開中のため、ネタバレ禁止のためほどほどに。「月刊アクション」連載の高野苺による人気コミック「orange」を実写映画化。原作は未読。ヒロインの土屋太鳳と山崎賢人は、朝ドラ「まれ」と同じ顔合わせ。本来ならば、「また、この二人か……」となるべくところ、この2人おいては、そういう感覚は生まれず。相性がいいのだろう。相性がいいと思ったからこそ、制作サイドもこの2人をキャスティングしたのだと痛感する。パラレルワールドにおいて、自分たちのおかれた運命を変えようと将来の自分から来た手紙をもとに、もがき苦しむ女子高生を土屋太鳳が好演。地味にかわいい。現在の女優戦線において、地味カワ路線は土屋太鳳の一人勝ち状態。時空を超えるファンタジーものとしては、「時をかける少女」(大林宣彦監督)に勝るものはないと思っているが、この作品も良作であった。
 
 

5位 幕が上がる(2月28日公開)

 
ももクロが総出演の映画ということで、公開前から「アイドル映画」のレッテルを貼られていた同作品。しかしながら、とんでもない仕上がりになっていてあ然。ももクロの5人というよりは、完全に富士ヶ丘高校演劇部のメンバーです。地区大会すら勝ち上がれない弱小の演劇部を代替わりで率いることになった高橋さおりを百田夏菜子が演じる。百田夏菜子の覚醒といっても過言ではない気がする。この作品を川上アキラは「最強のアイドル映画」と評したが、その「アイドル映画」という意味は、原田知世の「時をかける少女」にみられた1980年代の「アイドル映画」のことであり、現在のアイドルグループを単に起用したアイドル映画という意味ではないことがよく分かった。その意味では、まさしく、ここ最近ではなかった本物の「アイドル映画」であった。まだ観ていない人がいたら、絶対に観てほしい。そんな素敵な作品でした。
 
 

6位 バケモノの子(7月11日公開)

 
今や、ジブリに変わって日本アニメの一大勢力となった、細田守監督。前作の「おおかみこどもの雨と雪」が僕的には期待はずれだったこともあり、半信半疑での鑑賞。ところが、今回の作品は期待を裏切らない素敵な作品となっていた。渋谷の街とバケモノたちが住まう「渋天街(じゅうてんがい)」という2つの世界が交錯しながら、バケモノ(熊徹)と少年(九太)の奇妙な師弟関係や親子の絆が描かれているのだが、その中でも特筆したいのが、楓役で初アフレコを行った広瀬すずの声のすばらしさ。とにかく、広瀬すずの声に聞こえず、本当に「楓」そのものでした。初アフレコでこれをみせられると広瀬すずを評価せざるを得ないし、細田守監督がべたぼれするのもわかる気がした。
 
 

7位 ソロモンの偽証 前篇 事件(3月7日公開)

 
原作未読で鑑賞。原作は宮部みゆきの同名作品。とあるクラスの男子生徒・柏木卓也のクリスマス当日の学校屋上から転落死。自殺と判断した警察に対して、学校内で様々な憶測が飛び交い、事態は大きく動いていく。この作品で大きな役割を果たしてく初ヒロインを務めた藤野涼子だが、無名だった彼女を起用したことで、普通の平凡なクラスをうまく再現できている。どこにでもあるクラスで、どこにでもある生徒内の問題、そういった〝普遍〟から、〝異常〟に発展したときの激動感なんとも言えず、最高でした。
 
 

8位 ヒロイン失格(9月19日公開)

 
25歳(映画公開時)の桐谷美玲が女子高生役とは……と、まったく期待せずに鑑賞。ところが、映画監督のセンスを感じることになる。女子高生友達に福田彩乃がいたところでなんとなく納得。とにかく突き抜けていて面白い。そりゃ、25歳の桐谷美玲をあえて女子高生役として出演させることで、突き抜け感を強調できてました。英勉監督の戦略でしょう。今まで良作に恵まれたとは言い切れなかった桐谷美玲が、まさかこんな変顔やハゲヅラをつけたコメディエンヌとして脚光を浴びることになるとはびっくりの極みである。はとり役を演じきった桐谷美玲の貢献度が高い一作。
 
 

9位 罪の余白(10月3日公開)

 
芦沢央氏の第3回野性時代フロンティア文学賞受賞作を映画化。吉本実憂の存在感、ハンパなし。とにかく悪女役を熱演。クラス内のいじめにより、ひとりの少女が自殺する。そのいじめの主犯格が吉本実憂演じる木場咲。この木場咲がくせ者で、とにかくムカツク。いじめにつるんでいる生徒役で元私立恵比寿中学の宇野愛海。クラス内の冷静な生徒役で葵わかななど美少女的な見どころも多い。最後の最後まで木場咲がとにかくムカつきます。これも、吉本実憂の女優力がなせる業だと思います。彼女の今後に期待大。HUSTLE PRESS吉本実憂インタビューを12月31日(木)こちらで公開
 
 

10位 バクマン。(10月3日公開)

 
大場つぐみ&小畑健による大人気コミックの実写化。さすが大人気コミックだけあって、面白い。「週刊少年ジャンプ」という実在する漫画誌に、大きな夢を抱き作品を応募する青年たちの物語。小松菜奈が2人のヒロイン的存在で登場するのだが、これがかわいいのだ。小松菜奈は、スターダストプロモーションが誇るミステリアス系の女優だとばかり思っていたが、こういうかわいい役どころを演じ分けることができれば最強の女優になれると確信。
とにかくかわいい小松菜奈を観たければオススメ。まさか、メイド服を着るとは思わなかったが……。
 
 
1位~10位までをざっと紹介してきましたが、多少でも参考にしていただければ幸いです。 みなさんがランクインすると思っていたかもしれない「海街Dialy」は僕には残念ながら刺さりませんでした。綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すずと似ても似つかぬ(美人)四姉妹をそろえ過ぎた感があります。その時点でひいてしまった自分がいました。
 
 
僕は2016年も映画を鑑賞し続けます。邦画の場合は僕のツイッターで点数と寸評をあげていますので、興味のある方は是非。
井上朝夫 ツイッター
 
いやぁ、映画って美少女の宝庫ですね。
 
 

HUSTLE PRESS編集長 井上朝夫